第壱話 尊敬出来る上司と尊敬出来ない上司

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「有田さんはどうなの?」 でも、そんな時間もなく高取さんからの質問が飛んで来た。 「そうですね・・。私はそんなに会わなくても平気ですかね。LINE出来ていれば、生存確認出来ていれば取り敢えず安心というか。」 「え、会わなくて良いって・・どのくらいの頻度で?」 絶対にあり得ないというような顔で高取さんが私に聞く。 「週1とかですかね?」  私が答えると、高取さんが固まり車内には先程の綺麗な声のラジオパーソナリティの声だけが響く。暫くしてから高取さんが口を開いた。 「有田さん、悪いことは言わない。その考え方改めな。」 高取さんの出せる一番低い声ではないだろうか。安心安全な運転と綺麗な声のラジオのおかげで少し席に寄りかかっていた私の背筋は、出発時と同じくらいピンと伸びた。 「週1しか会わなくていい、しかもLINEさえ出来ていたらOKなんて・・。ほっっっんとにあり得ないよ!有田さん、間違いなく浮気されるよ?」 「え?浮気ですか・・?」 「そう、そんな緩過ぎる彼女だと彼氏が好き勝手し放題になるでしょ。あ、それぐらいの熱か~ってなって。LINEなんて平気で嘘付けるし、責めたって『そもそも俺たちそんなに会ってなかったじゃん』とか言われるんだよ。」 力強い語気に私はどうしても気になって、失礼を承知で聞かずにはいられなかった。 「もしかしてですけど、そういう経験があったりします?」  高取さんは一呼吸置いて、 「私じゃなくて、友達。仕事も忙しかったから暫く会えない時期もあって、そうしたらその間に彼氏に二股かけられてたんだって。私は『そんな男最低だ』って言ったんだけど、『もっと彼の傍にいてあげられていたら変わってたかも』って後悔してたのその子。自分を責める必要なんかないのに、悪いのは完全にその彼氏なのに、そういう姿見ているから、有田さんには同じようになって欲しくないのよ。」  私はまだ交際経験が一度もない。しかも、誰かと付き合う事にあまりメリットを感じていない。だから恋愛に大して力を注いでいないし、たとえ恋人が出来たとしても、そんなに会う理由が私自身はにないと思っていた。でも高取さんのこの話を聞くとそうも言っていられないのかな、男という生き物はそういうものなんだと思うしかないのかなと思いつつある。まあ、いつかは誰かと付き合う事になるだろうし、結婚するだろうし、自分の目で確かめないと何とも言えないけど。この話だけで考えを変えるのは時期尚早だと思った。
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