序章 私という人間

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 ここまでで幾分か感じている人もいると思うけど、こんな感じで私には「情熱」というものがこれといってない。特に趣味も、興味のあるものもないから基本進んで調べ物をしようともしないし、物欲も特にないからネットショッピングもそんなにしない。だから部屋は自然とミニマリストのような雰囲気に落ち着いている。物が溢れていないので、掃除がしやすく自画自賛出来るくらい部屋は綺麗だ。一人暮らしを始めてここに住んで2年経つのに、まるで引っ越して来たばかりのようにすら感じる。誰かが来たら第一声で「綺麗だね」と言われる自信がある。まあ、誰も来ないからそんな第一声を聞ける日は大分遠いんですけどね。    さっきも言った通り昼がひっきりなしに騒がしいが故に、この何も起こらない夜は私の中では癒しで凄く大切な救いの時間になっている。これを侵され失うのは何があってもいけないし、到底考えられないことだ。誰が干渉していいものでもないし、私のこの自由を邪魔する奴は誰であろうと許さない。この結界の中で過ごす穏やかな時間と空間を、私はこれからもずっと大事にしていきたい。    気付いたら時刻は午前0時を回っていて、日付が変わっていた。明日もまたいつもと変わらぬ出社。自然とため息が出る。そろそろ寝よう。朝が来るのを憂鬱に思いながら寝る毎日はいつになったら変わるんだろうか。子供の頃は「明日も友達に会いたい」という理由から、早く次の日になればいいのに、夜なんか早く過ぎてしまえと思っていたのに、今は朝目が覚める度に絶望している。何処の分岐点で間違ってしまったんだろう。というかそもそもその間違いルートに行く自分を止められる程の努力はしたのか。してないからこうなっているんだろう。胸を張って「頑張ったな」とは言えない今までの自分が部屋の中でもう一度ため息をつく。  このまま行くと、また気持ちが底についてしまいそうなので切り上げる。そんな状況に陥っている自分に嫌気が差した。枕元に置いている部屋の明かりのリモコンを操作して、消灯した。
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