確保

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確保

「そこまでだ!研究を止めろ!」 突然の出来事に、中に居た者達が狼狽する。 だが、直ぐに落ち着きを取り戻し四人は、戦闘の構えを取りつつ、イアン達魔法士を牽制するように睨みつけた。 「どうやら、大人しく捕まる気はないようだな」 「みたいですね。」 「まぁ…、そりゃそうか…。そう簡単にはいかないわな」 「だよねぇ…」 男達の反応を見て、イアン達はそう口々にしながら応戦するべく戦闘態勢を取った。 先に攻撃をしかけたのは敵側だった。  男達は、魔法士達に突撃すると、物凄い速さで近付き襲いかかる。 四人はそれぞれ四方に散り攻撃をかわした。 それぞれ一対一になる戦闘が始まった。 イアンの相手は、長身の男だ。 長身の男は両手に装備している黒い布製の 手甲(てっこう)に魔力を込める。すると手甲は淡く光を放ち鉤爪(かぎつめ)へと変形した。 『魔爪』と呼ばれる魔法具の1つである。 長身の男は、その鉤爪でイアンに斬りかかる。  「死ねぇ!」 イアンは、それをヒラリと俊敏な動きで躱し距離を取ると、バランスボール中程の天雷球(サンダーボール)を放つ。 長身の男は、天雷球を鉤爪で弾き飛ばそうとする。 「こんなもの…!」 だがしかし、その威力は凄まじく、男の鉤爪を圧し折った。 「なにっ!?」 長身の男は、驚きに目を見開く。そして、次の瞬間、男の体に「ドゴッ」と鈍い音を立てて雷撃が直撃した。 長身の男は、感電し「ぐげぇぇ」と妙な叫び声を出しその場に倒れ伏した。 イアンは、感電しピクピクと痙攣している男に近づくと、もう聞こえていないであろう相手ひているに「そんなもんじゃ、俺の魔法は防ぎきれねぇよ」と言った。 イアンから、やや離れた場所ではガレンが別の男と戦っている。 彼は、火炎魔法で炎を操り果敢に攻め込む。 「オラオラァ!」 「くっ…!」 ガレンの猛攻に、男は手も足も出ず防戦一方だ。火炎魔法による怒涛の攻撃を前に、男はただ必死に避けることしか出来ない。それどころか反撃する機会すら一切見つからない。その為、男に表情には焦りの色が見え始める。 それでも何とかギリギリ躱していた男だが、遂にガレンの炎が男の体を捉えた。 「ぐぁああ!」 男は、炎に焼かれながら倒れた。そして、そのまま気を失った。 「なんだ、こんなもんか…。」 想定していよりも手応えがなく、ガレンは拍子抜けしたように呟いた。 同じ頃、グレースは中肉中背の男と戦闘を繰り広げている。 彼女は、植物魔法で白い花を創出する。それを見た男は、軽侮(けいぶ)の色を浮かべる。 「そんな花で何が出来る!女の魔法なんて所詮その程度!」 「くらって見れば分かるんじゃない?」 しかしグレースは、そんな男の言葉には意にも介さず、涼しい顔をしている。 男は軽侮の色を浮かべたまま、花に近づいた。その瞬間、花は開花し花粉を撒き散らした。その花粉を吸い込んだ男は力が抜けたように崩れ落ちる。 「……な……んだ……これ……」 「この花はね、人の神経系を麻痺させるの。一度吸うと、暫くは動けないよ。」 グレースは、へたり込んでいる男にそう説明をすると、連の花の花弾を創出する。そして相手に投げつける。 花弾は、美しい見た目を維持したまま相手に強力なダメージを与えた。 「ぐはっ!」 油断していた男は、その攻撃をモロに受け気絶した。 そしてレイソンの戦いもクライマックスを迎えようとしている。 レイソンは水魔法で、巨大な水砲を大柄の男に発射する。その威力は大木を一撃で粉砕するほどだ。 大柄の男は、咄嗟に防御態勢を取り、踏ん張っていたが耐えきれずに吹き飛ばされ、気絶した。 こうしてイアン達魔法士VS残党の戦いは魔法士の圧勝で終わったのだった。 イアン達は捕らえた男達を全員一箇所に集めた。 「さて……と。こいつら、どうするよ?」 「まぁ、城に連行するし、縛っておくしかないんじゃないか?」  ガレンの問いかけにイアンが答える。   「じゃ拘束用魔法具で縛ろう。」 グレースはそう言うと拘束用魔法具を気絶している男達に嵌めた。そしてそこに更に魔力封じの鎖で固定する。 「これでよしっと!」 「後は、あの装置だけだな…。」  「俺が壊します。」 イアンは、そう言うと謎の装置に天雷球を当て破壊する。装置はプスプスと音を立てて壊れた。 残党は拘束用魔法具の鎖に繋いだまま、イアンの風の魔法で浮かせて、引っ張ていくことになった。 そうして奇襲を終えたイアン達が帰ると、セリスが駆け寄ってきた。どうやら窓から四人が戻ってきたのが見えて、走ってきたらしい。 セリスは、その勢いのままイアンに抱きついた。 「っと…。」 イアンは、何時もはそんな行動をしない彼女に驚きつつも、難なく受け止めた。そして、顔を上げようとしないセリスに問いかける。 「セリス?」 「良かった…。無事に帰ってきて…。」 「当たり前だろ。ガレンもレイソンさんも居たんだし。それにお前を残して行くわけないだろ。」 そこまで言うと、彼はセリスの頭にポンポンと軽く撫でた。 「怪我は?してない?」 「してない。ほら、中に行くぞ。」 セリスがイアンを見上げて尋ねると、短く答えて城内へと促した。そして二人は城の中へと入っていった。 かくして、黒いローブの輩達の残党も捕獲され、町には平穏が戻ったのだった。
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