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「僅かにですが、イアンの魔力を感じます。やっぱりこの辺りに居るのは間違いなさそうです。」
「だとしたら、地上ではないのかもね。」
「やっぱり、地下ってことですか」
「でも地下に繋がるような入口とかは見当たらないぜ?」
三人は、辺りを見渡しながら話す。
しかし、地下への入口どころか人がいたような形跡すらない。考え倦ねいて居ると、ルクレールが突然、何か閃いたのか「そうだ!」と声をあげた。そして続けて言う。
「クラークの能力で、見つける事できるんじゃない?隠れている入口になりそうなものとかを。」
「確かに、それなら!クラークさん、お願いできますか?」
「んー、やってみっか。ちょっと待っててな」
ルクレールの提案に、セリスが同意する。そしてクラークに頼み込んだ。
クラークは、少し考えた後、目を閉じて意識を周囲に集中させる。
(地下への入口、……入口……。お、もしかして、あれか?)
すると、何やら草で隠れている穴を発見した。その穴は、人一人が通れるくらいの大きさだった。
彼は目を開けると、セリス達に穴を見つけた事を伝える。
「あそこの辺りに、人が通れそうな穴がある」
セリス達は、クラークが指差す場所に行き、調べてみると、そこには確かに、人が通れそうな穴があった。
それは、巧妙に魔法で隠されていて、クラークの能力が無かったら、見つからなかっただろう。
セリスは、やはりクラークを連れてきて良かったと心底思った。
「誰から降りる?」
「此処は男のオレからでしょ」
クラークはそう言うと、自分の腰にロープを付けてルクレールに、ロープを持っていてもらい、下に降りた。彼は、自分がセリスより年上な為、彼女を守る存在だと思っているのだ。
「どう?大丈夫そう?」
「おー。」
「じゃ、次はセリスちゃんどうぞ。」
「はい」
先に降りたクラークが辺りを確認してから、ルクレールに答える。その後、セリスが降りて、最後にルクレールも降りた。
穴の中に入ると、その先は、やや広めの一本道の通路のようになっていた。
ルクレールは、ロープを回収し腰に巻き付けながら、「さて」と口を開く。
「ここからどうする?」
「そうですね…まずは、イアンが無事なのか確認したいです。」
「その必要は無い。やはり来たか。あの男を捕えて正解だったようだな。」
セリスとルクレールが話していると、突然
黒いローブを着た男三人が、セリス達の前に姿を現した。
そして、一人の男が不敵に笑いながら言う。
セリス達は、突然現れた男達に驚きつつも警戒する。
「イアンは何処なの!言いなさい!」
セリスが、怒りの形相で怒鳴るように言う。
「イアン?」
「紫色の髪の男がいるはず!彼の居場所を教えなさい!」
「あぁ…、あの男か。彼なら、この先の牢屋の中に閉じ込めている。安心しろ、まだ生きてはいる。」
「ほら」と、男が魔法で画面のような物を出した。そこには、鎖に繋がれたイアンが牢屋の中に入れられている映像が映し出された。
「イアン!!」
セリスは画面に向かって思わず叫んだ。
「イアンに何をしたの!?」
「他の奴が毒を飲ませたみたいだな。」
「毒……だって!?」
セリスは、毒と聞いた瞬間、顔面蒼白になり動揺し始める。
そんな彼女を落ち着かせようとルクレールが話しかける。
「セリスちゃん!落ち着いて、嘘かもしれないよ!」
確か、映像を見た限りでは、イアンが苦しんでいる様子はなかった。それでも、セリスの不安は拭いきれない。
まだ毒が回っていないだけかもしれない…。
だとしたら、一刻も早く解毒剤を飲ませないと、イアンの命が危ない。
セリスは、直ぐにでも駆け出したい気持ちに駆られる。しかし、その前にやる事がある。目の前の男達を捕らえなければならない。彼女はジレンマを抱えつつ、男達はに言い放つ。
「あなた達を、捕縛します!」
セリスの、その言葉にクラークとルクレールも戦闘態勢に取る。
「出来るものなら、やってみろ」
男はそう言うと、セリス達に攻撃を仕掛けた。その攻撃をルクレールが氷で弾く。
「セリスちゃん行って!」
「おれ達は後から行くから!」
「でも、私が抜けると分が悪くなるんじゃ…」
「ここは大丈夫!」
「今はヴァイオレンが最優先だ!」
「っ、分かりました!じゃあ先に行きますね!」
セリスは、一瞬躊躇ったが、二人の心遣いに感謝して頷くと、急いでイアンのいる場所へと走りだす。
「おい!あの女を追え」
リーダーらしき男に言われ、男の一人が、セリスの後を追おうとする。
「行かせない!」
「お前達の相手はおれ達だ!」
それを、ルクレールが氷魔法で氷を飛ばし、クラークが金属魔法で生成した鎖で、男の動きを封じ阻止した。
「たった二人で勝てるとでも?」
「そりゃもちろん。」
「余裕ね」
こうして、ルクレールとクラーク対男C・Dとの戦いが始まった。
それから少しして、この戦いは魔法士二人の圧勝で終わりを迎えた。
ルクレールとクラークは、それぞれの魔法を巧みに操り、息のあった連携プレーで、あっという間に黒いローブの男達を戦闘不能にさせてしまったのだ。
流石、先輩魔法士と言うだけはある。
その見事な手際良さに、もしこの場にセリスが居たら目を輝かせているだろう。
「ふぅー。こんなもんか。」
「なんか、あっけなかったね。」
「だな~」
クラークは男達を捕縛しながら答えた。
「セリスちゃんの後を急いで追おう!他にも仲間がいるかもしれないし!」
「おう!」
そうして二人はセリスの後を追うのだった。
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