真実

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真実

その頃、ガレンは男を牢に戻し終わり、イアンに代わり、レイソンに報告する為に彼の執務室を訪れていた。 「レイソンさん、尋問終わったんでイアンの代わりに一応報告しておきます。」 「そうか…、ご苦労だったな。何か吐いたか?」 「はい…アジトは、先日イアンが転送されたあの場所と、もう一つあるらしいです。狙いには、研究の他にセリスも含まれていたようです。残党は四人程いるとのことです。」 「その、もう一つのアジトとやらは解ってるのか?」 「イアンとセリスは知っているようです…。」 「そうか…。」 ガレンが尋問で聞いたことを、レイソンに伝える。レイソンは、思案顔で手を組み考える仕草をする。 そこへ、扉をノックする音がして彼は一時考えるのを中止した。 レイソンが返事をすると、ドアをガチャと開けて中に入ったのはギルバードだ。 彼は、先に来ていたガレンに、目を向けると話しかける。 「おや…、ファイラ君も居たんですか」 「はい。あ、アイツ…イアンは医務室に行きました?さっき目眩起こしたんで、行くように言ったんすけど…」 「うん。来たよ。その彼のことで話があってね、ここに赴いたんだ。」 「なるほど…」 ギルバードの言葉にガレンは納得したように頷いた。 「で、ギルバードさん、ヴァイオレンの話ってなんですか?何か身体に問題が?」 「いや、そういうわけじゃないけど、次の作戦に、彼は参加させないでほしい。まだ彼も万全ではないのは、君達も解ってるだろう?」 「まぁ…。確かにあの様子じゃ無理かもな。戦闘にでもなったら…」 ガレンは、先程の尋問室でのイアンの状態を思い出し、ギルバードの言葉に同意する。 「分かりました。元より外す予定だったので。」 「なら、良かった。この事は既にヴァイオレン君には話してあるから。」 「了解です。」 「それじゃあ、僕はこれで。」 「オレも戻ります。」 ギルバードが部屋を出ていき、続くようにガレンも立ち去ろうとした。すると、 そんなガレンに、レイソンが後ろから言伝を頼む。 「あ、ガレン。すまないが、ヴァイオレンかセリスかどちらかを呼んできてくれ。」 「了解。じゃ、失礼します。」 ガレンは、振り返り返事をすると部屋を出た。 (あの二人、一緒に居るのか?つーか何処に居るんだ?まだ医務室か?それとも執務室に戻ったのか?) などと考えながら二人が居るであろう場所に当たりをつけると、そちらへと足を進める。 レイソンの部屋から廊下を真っ直ぐに進み、突き当たりの渡り廊下を渡り、少し歩くとイアンのセリスの執務室がある。 イアンとセリスの執務室に到着すると、扉をノックしてから部屋の中に入った。 「どうした、ガレン。」 「レイソンさんが呼んでる。イアンかセリスどっちでも良いから行ってくれ。」 「あ、じゃあ私が行くね!仕事終わってるし!」 「レイソンさんは、執務室に居るぜ」 「分かった!じゃ、行ってくるねイアン!」 「あぁ…、頼んだ。」 セリスは、ガレンにレイソンの居場所を尋ねると、椅子から立ち上がる。そして、イアンに一声をかけた。 イアンは、彼女に目をやり短く返す。 それを聞いたセリスは、扉の方へ行き、執務室を出て、小走りでレイソンの執務室へと向かう。到着すると、扉をノックをする。 「レイソンさん、セリスです。」 「来たか…、入っていいぞ」 「失礼します。何か御用ですか?それか書類に不備でもありました?」 「いや、違う。セリスとヴァイオレンが見たと言うと、例の場所について聞きたくてな。」 「あ、その事ですか…。」 「そうだ。その場所について教えてくれるか。」 「はい。地図ありますか?」 「あぁ、待ってろ」 レイソンは、机の引き出しの中から王都や町の全域が描かれている地図を取り出す。そして、それを執務室の上に広げた。 「これで良いか?」 「はい。大丈夫です。えーっとですね、あ、ここです。この建物の下にありました。」 「ここだな?」 セリスは、地図に描かれている町の奥にある建物を指し示した。その場所にレイソンが赤いペンで丸く囲むように印をつけた。 「地下への入口は?」 「この小屋の中の隠し扉から行けます。」 「他にはないのか?」 「分かりません。私達はそこからしか行ってないので。」 「そうか。分かった。」 レイソンは、そう言うと地図を机の中にしまった。彼が引き出しの戸を締め終わるのと同時に、セリスがレイソンに質問する。 「レイソンさん、私も聞きたい事があります。」 「何だ?」 「乗り込む時、私は外されるんですか?イアンが、私も待機組だって言ってたので。」 「いや、まだ検討中だが…。そのつもりだ。」 「どうしてですか!?理由を教えてください!理由もなしに納得できません。」 セリスは、レイソンに鬼気迫った表情で詰め寄る。 「ヴァイオレンからは他に何も聞いてないのか?」 「はい…。イアンは何も教えてくれませんでした。」 彼の事だから、彼女が傷つかないように言わないのだろうとレイソンは推測した。 そして、彼が話さないのなら、自分が言うわけにいかない。 レイソンは、彼の意を組み、適当な理由をつけることにした。適当ではあるが、嘘ではない。休ませたいのも、書類があるのも事実だ。 「今回の事で、お前も大変だっただろ。だから少し休めさせようと思ってな。それに留守の間にやってもらいたい書類もある。」 「……それだけですか?何か他に理由があるんじゃないんですか?私に隠すような何か…。」 「ない。」 この後輩は、時々物凄く鋭い時があるなとレイソンは思った。 「そうですか、分かりました。そういう事なら、仕方ないですね。でも、案内役いなくて大丈夫ですか?」 「問題ない。にしても、どうしてそこまで行きたいんだ?お前、そんなに戦うのが好きじゃなかっただろ。」 「最初に発見したのは私、イアンでしたから…。町の人から請け負ったのも私で…。だから、最後まで、やりたくて。」 「真面目な、お前らしいな。」 レイソンは小さく笑みをこぼす。 「話は以上だ。呼び出して悪かったな、戻っていいぞ」 「分かりました。それじゃあ失礼しますね。」 セリスは頷き、レイソンに軽く頭を下げ彼の部屋を出た。 (やっぱり、イアンの言ってたとおりだった…。でも、二人して何か隠してるっぽいんだけどなぁ…。イアンの調子が戻ったら、私も行けるのかな?) 彼女が、そんな事を考えながら執務室に戻る途中、ガレンとグレースの部屋の前に到着した。 すると、中から話し声が聞こえた。セリスは、悪いと思いつつ聞き耳を立てる。 「それ、本当なの?」 「おー。奴らの狙いはセリスだったみたいだ。」 (標的は私だったの?だから、イアンもレイソンさんも私に言わなかったのか…。) セリスは、初めて敵の標的が自分だった事を知り、イアンとレイソンが、はぐらかした事に納得した。 「セリス、大丈夫かな…。」 「平気だろ…、アイツだってそんなに弱くない。」 「そうだね。」 (イアンに本当かどうか聞いてみよう) と、資料室の中では、まだ話は続いているが、セリスは、本当の事をイアンに聞くべく急ぎ足で自分の執務室へと戻った。 勢いよくバン!っと扉を開け室内に入ると、自分の椅子に座った。 「ただいま。」 「おかえり。レイソンさんはなんだって?」 「あの小屋の下の地下の場所を教えてほしかったみたい。」 「それだけか?他には何か言ってたか?」 「ううん。それだけだ」 「……そうか…。」 そういうとイアンは再び書類をスラスラと書き始める。 セリスは徐ろに口を開いた。 「ねぇ、捕まえた人達の狙いは私だったって本当なの?」 「お前、それ誰から聞いたんだ。」 イアンは、少し目を見開いた。 ガレンが告げ口をしたのかと彼は考えた。この事を知っているのは自分と共にガレンだけだからだ。しかし、直ぐに違うとすぐに頭の中で訂正する。 だとすると、レイソンか?と彼は予測を立てた。 「直接聞いたわけじゃないよ…。 資料室の前を通ったら、ガレンとエミリアが話してるのが聞こえてきて…。思わず聞き耳立てちゃった。」 (そういう事か…) どうやら当たらずも遠からずといったところだった。 直に言われた訳では無いが、原因はやはりガレンのようだ。イアンは額に手を当てる。そして、隠していた事が露呈(ろてい)し渋い顔をする。 (あの馬鹿、そういうのは不用意に言うなと言ってるのに…。) 息をつくと、尋問で聞いたことの一部を()い摘んでセリスに話す。 「言うつもりはなかったんだけどな…、こうなったら仕方ないか…。そうだ。奴らの狙いの1つにお前も含ませてるのは事実だ。」 「!何で早く言ってくれなかったの!?」 「分かったのは、ついさっきだ。それに、言うとお前が傷つくと思ったんだよ。自分のせいで俺が…とか、また思ってんだろ?」 「そ、れは…」 図星をつかれ、セリスは口をつぐむ。 それを見たイアンは、心の中でやっぱりなと思い、ため息をつき話を続ける。 「だから、言いたくなかったんだ。お前は思い詰めるだろうと思ったから。それに、お前の事は俺が守れば良いだけだとも思った。」 「でも、知ってれば私にも対策はできるよ!」 「そうだな。まぁ…そういう事だから、城の外に出る時は気をつけろよ。」 「分かった。」 セリスは、イアンからの忠告に素直に頷いた。
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