潜入開始

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潜入開始

かくして翌日。 魔法士達は会合室に集待っている。設置されている椅子には座らず、全員が立ったままだ。そして、レイソンから奇襲の件についての詳細が伝えられた。 今回の作戦としては、残党が少ないのと気づかれるのを防ぐ為に、少数で乗り込み奇襲をかけるようだ。そして、町中で、なおかつ近場の為、馬は使わないとのこと。 決行日は5日後。 今回、攻め込みに行く面子は、レイソン、ガレン、エミリアに決まった。 案の定、イアンとセリスの名前は入っていなかった。 「以上だ。」 こうして会議は終わり解散となり、魔法士達は各々戻っていく。 そんな中、イアンも同じように出ていこうとしたが、レイソンに引き止められる。 彼は、セリスに先に戻ってろと伝えると、彼にレイソンの方へと向き直る。 「なんですか?」 「この5日というのは、お前への事を考慮した結果だ。この間に万全な状態に戻り、許可も降りたら、お前も同行して良い。」 その申し出は、自分からするつもりでいたイアン。まさかレイソンから言い出されるとは思わず、面食らう。 「!…それは、本当ですか?」 「あぁ…。」 「分かりました。失礼します」 イアンは、部屋から出ていく前に一礼をするとその場を立ち去った。 (5日か…。まぁ、なんとか戻せるだろ。) 彼が、会議室を出たその足で向かうのは医務室だ。 「失礼します。 ギルバードさん、今より強めの薬に変えられませんか?」 「どうしたんだい?藪から棒に…」 「5日後に間に合わせたいので。」 「うーん。強めの薬か…。あまり強くても体に負担をかけてしまうからね。」 ギルバードは、イアンからの問いかけに難色を示す。 「じゃあ他に何か方法はないですか?」 「そうだね……。飲み薬じゃなくて、注射の回数を増やそうか。今は朝と夜に一本ずつだけど二本ずつに。」 「それで、お願いします。」 「分かった。今日の夜からね。」 イアンは、ギルバードの提案に即答した。その日から、イアンは薬の量を増やしてもらえる事になった。 それからというもの、イアンの調子は順調に回復していき、決行日の前日には、残留していた毒もなくなった。 「うん、もう、良さそうだね。」 「!」 「明日行っても良いよ。」 「ありがとうございます!」 イアンは、ギルバードに礼を言って深々と頭を下げた。これでまたセリスを守れると安心しホッと胸を撫で下ろした。 「失礼します」 そして彼は、医務室から出ていったのだった。 決行日当日の朝が来た。 レイソン、ガレン、グレースは各自室で身支度や、準備を進めている。 準備が整うと三人は、それぞれ城門前に向かう。 集合している三人の元にイアンが現れた。 彼は、レイソンに歩み寄ると、同行を懇願(こんがん)する。 「レイソンさん、俺も行っても良いですか?体も万全になりましたし、ギルバードさんの許可も降りました。」 「そういう事なら…いいだろう。案内は任せたぞ」 「はい!」 イアンは力強く頷いた。 レイソンとの話が終わると、ガレンが彼に近寄ってきた。 「よー。イアン!もう良いのか?」 「お陰様でな。」 「そうか、なら良かったぜ!」 ガレンはイアンの肩をバシバシと叩くとニッと笑った。 「いってぇよ、馬鹿!」 「悪い悪い!」 「ったく…」 イアンは、その手を払う。 その隣でグレースが二人を微笑ましく見守る。 和気藹々(わきあいあい)としている彼らの所にセリスがやってきた。どうやら見送りに来たようだ。 彼女は、奇襲に向かう四人に忠告をする。 「気をつけてね、皆!」 「うん!」 「おう!」 「あぁ…」 それにグレース、ガレン、イアンのは、頷き返事をした。 「良し、では行くぞ。」 レイソンの掛け声で、案内役のイアンを先頭に動き出す。 セリスは四人が見えなくなるまで見送ると、城の中に戻って、書類に取り掛かる。 そして、イアン達、奇襲組は暫く歩き例の小屋の場所に到着した。 イアンは、立ち止まると、他の三人に止まるように言う。そして、小屋の周辺を注意深く観察すると、レイソンに伝える。 「ここです。」 「ここか…。確かに怪しいな。」 「っすね…。」 「俺が先に行くので、付いて来てください。」 イアンが扉を開けて中を見る。建物の中には、前回同様、誰も居ないようだ。置いてある物も変わっていない。 彼は、そのまま先陣を切り中へと入っていき、その後をレイソン、ガレンが続き、最後にグレースが入った。 全員が入ったのを確認すると、イアンは、セリスと来たに見つけた隠し扉の前まで行き指差す。 「この扉を開けると地下に繋がる通路があります。」 「ここからは俺が先に行く。お前達は付いてこい。」 レイソンは扉を開けて、階段を降りていく。それに他の三人も続いた。 今回は光魔法を使うセリスが居ない為、ガレンの炎魔法で出した火で照らしながら歩く。 階段を降り終わると、真っ直ぐ石造りの道を進む。 そして、研究所らしい空間が見えてくると、一旦足を止めて、物陰に隠れ中の様子を窺う。 中には、イアンが前回来た時には居なかった黒いローブを着た四人の人間達がおり、研究装置の様な物があった。 その四人が、尋問で言っていた仲間だろう。 (あれか…) (はい…。俺が以前来た時には、誰も居なくて、あの装置もありませんでしたが、間違いありません。) レイソンとイアンは隠れたまま小声で話す。 (しかし、いつの間にこんなの作ってたんだ…?それもオレらにバレずに。) (確かに……いくら地下とはいえ、バレずに道具を運び入れるのは難しいはず。) ガレンとグレースも、小声で会話に交ざる。自分達が知らない間に研究所を完成させ、道具の搬入まで行うという所業に驚きを隠せない様子だ。 (そんな事は後だ。先ずは奴らを捕獲するぞ) レイソンが、三人に作戦を指示すると、三人は無言で頷いた。そして、イアン達魔法士四人は、目で合図を送り合うと、物陰から飛び出し一斉に突入した。
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