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本心
私は天を仰いだ。
ここには長年対峙してきたモニターも、データもなく、青空と、紫の大地、それに廃墟が広がるばかりだった。
一人になってようやく私には、私の本心が見えた。
「ごめんなさいグレッグ。私は戻れない。
あなたはいい助手だった。
どうか世界と幸せに」
そして通話を切った。車から出て、ヘルメットをとり、防護服を脱ぎ、私は走り出した。
空からあんなものが降ってこなければ。
私がもっといい作戦を立てていられたら。
解毒の方法が見つかっていたら。
汚染とは縁のない場所で出会い、なんてことない日に微笑み合うような、奇跡的な時間を過ごせていたら。
数々の仮定と後悔が頭を渦巻く。
けれどもう足は止まらない。
馬鹿なことをしているとわかっている。
だけど、今は。
彼の元に行きたい。
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