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再び現れた私を見て、カナタは驚いた。
「ルリ……なんで」
「一人で死なせない」
私は息を切らせながら駆け寄って、彼の胸に飛び込んだ。
防護服がない今、彼のぬくもりが伝わってくる。心音が聴こえる。
「私、カナタが現れるまで、人類のために科学者として戦って、いつだって死ぬ覚悟ができてた。
でもカナタと出会って……本当はあなたのために戦うようになった。あなたと話すのが楽しかった。
さっきやっと、気持ちに気づいたの」
私の肩が濡れる。彼が泣いている。
「もっと早くに気づけばよかった。今になって自分の気持ちを解明するなんて」
私を抱く彼の手に力が入る。
「俺だって……ずっとルリのために戦ってた。はじめて会った時から、人類よりも君を守りたかった。
君のために戦って、話して、それでようやく『今日を生きてる』って思えたんだ。
でもロクな生き方していないし、どのみち死ぬってわかってるのにストレートに言えなくて……軽口叩いて、報酬ほしさに戦ってるフリしてた。
だけど、ルリのことを聞けば聞くほど好きになってた。
最後の戦いの後、君の重荷になりたくなかった。ここに来て、ルリのこと思い出していた。
死ぬ前にルリに会いたいって思った。
そしたら、本当に来てくれて……なのに、ごめんな、こんな奴で。最後に巻き込んで」
「一人で死ぬのは嫌だった」と、彼はぼろぼろ泣き、私は「大丈夫」と彼の頭をなでた。
「最後まで一緒にいる。
愛してる」
カナタと私は見つめ合い、キスをした。
この瞬間が永遠であればいい、と思った。
遠くから、ヒュウウ、と風を切り裂く音がする。
きっと爆撃機だろう。
私はカナタを、いっそう強く抱きしめた。
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