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最終決戦
美しい光だった。
1人の青年が、錆びれたバズーカから放った巨大な光線。それは太陽の如き眩しさで、敵を貫いた。一瞬画面が真っ白になった後、再び映像が戻る。
うめき声を上げて、敵――100mを越える怪獣が荒野に倒れた。地響きが私のいる施設まで伝わってきた。
土埃でモニターが見えなくなり、数秒後。
視界が開ける。怪獣はピクリとも動かない。黄色い目からは生命の光が消えている。
私はもう一つのモニターを見た。青年は崖の上に立っている。
無事だ。
世界は救われた。
「やったぁ!」「カナタが勝った!」
作戦室に詰めかけた何百人もの人がどっと沸き立つ。喜びの声と拍手、感極まった泣き声も聞こえる中、インカムから助手の声がした。
「博士、準備できました!
カナタを迎えに行けます!」
私は通路を走り出す。
手元のモニターでは、これまでの9体と同様、怪獣は紫のゼリー状に全身を変えつつあった。
すぐに粘性を持った液体になり、地表に流れ出す。液体に触れたり、気化したものを吸い込むだけでも謎の病にかかる、毒へと化す。
急がなければ。
ターミナルにはグレッグが待っていた。
「博士、新しい防護服を。汚染濃度は今までにない高さです」
「ああ」
作業員たちが装着を手伝ってくれる。防護服に身を包みながら私は、昨夜のことを思い出していた。
私が招集した面々は深刻な顔をしていた。
重苦しい空気の中、場違いにゲーム音が鳴っていた。カナタだ。机の上に長い足を投げ出しているが誰も咎めない。
それどころか、彼の反応を待っていた。
ゲームの区切りがついたのか、カナタは唐突にスマホを投げ出し、口を開いた。
「――それ、俺がやるよ。最後は全部引き受ける」
「ちょっと買い物行ってくるよ」くらいの気軽さで最強の戦士はそう言った。
「その代わり、報酬は弾んでくれよな?」
彼はニヤリと笑った。
救護車が大きく揺れ、我にかえった。呼吸するとフィルターを通して硫黄のにおいがした。大地が紫に染まる時のにおい。
「諸星を目視で確認!」
フロントガラスの向こうでこちらに手を振っていたカナタはしかし、次の瞬間膝から崩れ落ちた。
「急いで!」
思わず叫んだ。グレッグが驚いて私を見る。いつも冷静沈着、「氷の女」と呼ばれる私らしからぬ態度だ。
私だって、私がわからない。
どうしてこんなに全身に悪寒が走るのか。車から降りて走り出したいなんて、非効率的なことを思うのか。
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