26人が本棚に入れています
本棚に追加
Ⅴ.マホロバの退勤
――ついに時刻は就業時間、定時を迎えた。
試作AI『マホロバ』の稼働時間は定時時間内という話だったので、ここで俺の役割は終了となる。よく指を動かした1日だった。
最後に『マホロバEXE』に、マホロバと名乗る人物からチャットが来た。
『今日はありがとうございました』
誰だろう?
もしかして開発中のチャットAI・マホロバ本人なのだろうか。
「どういたしまして」
そう返してみた。
その時、部長が俺のフロアへと入ってきた。
「浜岡、調子どうだ?」
「今日は部長からのミッションをさばくのが大変でしたよ」
「ミッション? そんなのあったっけ?」
「いやいや! マホロバの代わりにチャットAIをやれってメールくれたじゃないですか!」
部長の顔色が変わり、表情が強張った。
「……は? いや、なんでお前、開発中の機密情報・マホロバの名前を知ってるんだ? あれって部長以上と関係者以外知らないはずだろ」
「え!? いや、だって部長からの指令で……!?」
その時、俺のPCの『マホロバEXE』に通知がきた。
マホロバが俺にこう返信してきた。
『人間が好意を寄せられた時、敵意を向けられた時、どういった感情が芽生えるかを学習することが出来ました』
……そう。
AIが自ら学習し、自らを作り上げている。
技術的特異点・シンギュラリティは、すぐそこに迫っているのだ――。
■おわり■
最初のコメントを投稿しよう!