Ⅲ.マホロバと言う名の浜岡

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Ⅲ.マホロバと言う名の浜岡

 断りたかったが、部長命令ではそう無下にも出来ない。  ひとまず添付されていた資料を見て、どのように設定して、どのようにチャットAI『マホロバ』に成り代われるのかを確認する。  ……なるほど。  シンプルにマホロバへのアクセス先を俺のPCのIPアドレスに設定して、開発中の仮ソフト『マホロバEXE』というチャットアプリで受け答えをすればいいというシンプルな内容だった。これなら可能かも。  俺は部長に対し「承知した」旨を懇切丁寧に書いたメールを送り、翌日の激務に備えて、今日は退勤することにした。 ***  翌日。  始業とともに『マホロバEXE』に対して通知が乱れ飛んでくる。社内向けの試作テストなのだから絶対相手は社員だろうに、うちの会社って結構暇なのだろうか。 『マホロバは男なの? 女なの?』  誰だこんな暇な質問する奴は。そんな設定知らんわ。 「好きな方で考えて頂ければ結構ですよ」  こんな感じでいいだろう。すぐに返信あり。 『じゃあ女ね。マホちゃんって呼ぶわ』  本当に誰だよコイツ。IPから割り出してこれをネタに強請(ゆす)ってやろうかと思ってしまう。 「はい。私はマホちゃんです。よろしくおねがいします」  ……しょうもない。俺の今日の仕事こんな感じかよ。  マホちゃんじゃねえよ、俺は浜岡ツヨシ独身28歳男性だっての。
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