Ⅴ.マホロバの退勤

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Ⅴ.マホロバの退勤

 ――ついに時刻は就業時間、定時を迎えた。  試作AI『マホロバ』の稼働時間は定時時間内という話だったので、ここで俺の役割は終了となる。よく指を動かした1日だった。  最後に『マホロバEXE』に、マホロバと名乗る人物からチャットが来た。 『今日はありがとうございました』  誰だろう?  もしかして開発中のチャットAI・マホロバ本人なのだろうか。 「どういたしまして」  そう返してみた。  その時、部長が俺のフロアへと入ってきた。 「浜岡、調子どうだ?」 「今日は部長からのミッションをさばくのが大変でしたよ」 「ミッション? そんなのあったっけ?」 「いやいや! マホロバの代わりにチャットAIをやれってメールくれたじゃないですか!」  部長の顔色が変わり、表情が強張った。 「……は? いや、なんでお前、開発中の機密情報・マホロバの名前を知ってるんだ? あれって部長以上と関係者以外知らないはずだろ」 「え!? いや、だって部長からの指令で……!?」  その時、俺のPCの『マホロバEXE』に通知がきた。  マホロバが俺にこう返信してきた。 『人間が好意を寄せられた時、敵意を向けられた時、どういった感情が芽生えるかを学習することが出来ました』  ……そう。  AIが自ら学習し、自らを作り上げている。  技術的特異点・シンギュラリティは、すぐそこに迫っているのだ――。 ■おわり■
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