6. 父

1/1
前へ
/27ページ
次へ

6. 父

 憂鬱な気持ちで家に帰った私を、犬のケリーが出迎えた。撫でてやると彼女は私の顔をぺろぺろ舐めた。  ダイニングでは、父が腰に手を当ててグラスの牛乳を飲んでいた。 「アグネス、おかえり」  今年55歳になった父は、年齢の割に若々しい。人に見られる仕事をしている人は若々しいと、前に誰かが言っていた。  父は「どうだった?」とは聞かない。いつも私が話し出すのを待ってくれる。 「今日は緊張したけれど、楽しかったわ」 「そうか、それは良かった」  父にイーディスのことを話すと、ふむと相槌を打ってある黒人少年の話を始めた。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加