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6. 父
憂鬱な気持ちで家に帰った私を、犬のケリーが出迎えた。撫でてやると彼女は私の顔をぺろぺろ舐めた。
ダイニングでは、父が腰に手を当ててグラスの牛乳を飲んでいた。
「アグネス、おかえり」
今年55歳になった父は、年齢の割に若々しい。人に見られる仕事をしている人は若々しいと、前に誰かが言っていた。
父は「どうだった?」とは聞かない。いつも私が話し出すのを待ってくれる。
「今日は緊張したけれど、楽しかったわ」
「そうか、それは良かった」
父にイーディスのことを話すと、ふむと相槌を打ってある黒人少年の話を始めた。
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