11. 苺のリュック

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11. 苺のリュック

 職員さんへの質疑応答コーナーの後、自由時間になった。  途中、イーディスの姿が無いのに気がついた。ガーウッド先生と一緒に探すも見つからない。  牛舎の裏を覗いた時、三人の男子生徒に囲まれる彼女の姿があった。ハンカチを届けた子たちだった。  苺柄のリュックを投げ合って笑う彼らと、それを必死に取り返そうとするイーディス。 「やめなさい!」  叫んだ次の瞬間、突風とともに土煙が巻き上がり、身体の横を黒い馬が駆け抜けた。乗っているのはクィン先生だ。  先生は手綱を振り下ろし馬を加速させると、生徒の一人が持っていたリュックを素早く奪い取った。  馬から降りた先生は、三人を凄い剣幕で叱った。 「あなたたち、下級生を寄ってたかって虐めて恥ずかしくないの?! 彼女に謝りなさい、今すぐ!!」  一人の男子が口を開いた。 「彼女も悪い、ハンカチを届けてやったのに何も言わないし」 「そうだよ、普通はありがとうの一言くらい‥‥‥」  もう一人の男子も言う。 「彼女は事情があって言葉が話せないのよ」  私が説明すると、彼らはバツが悪そうに顔を見合わせた。そこに担任らしき男性がやってきて、事情を聞くなり何度も謝り生徒たちに謝罪をさせ、二度とこんなことをするなとキツく注意していた。  
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