11. 苺のリュック

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 他校の生徒たちが去った後、リュックを抱きしめていたイーディスが急に泣き出した。 「大丈夫よ、もう怖い人たちはいない」  そっと頭を撫でるも、彼女は涙をぽろぽろ溢ししゃくりあげるばかりだ。  不意にリュックの下の方にある、赤い糸で施された刺繍が目に入った。 『愛するイーディス』という文字ーー。  これは彼女の亡き母の作品に違いない。だからあんなに必死に取り返そうとしていたのか。 「お母さんはあなたを見守ってくれてるわ。あなたを誰より大切に思って愛しているはず」  イーディスをそっと抱きしめた。胸の中で泣きじゃくる彼女が、幸せになるようにと願いながら。
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