運命の番

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 もしかすると、と思い次の休み、久しぶりに病院へ行った。そこで、俺の体はアルファとして成熟していることを告げられた。  そう言われたら、仕事のスピードが上がっている気がする。物覚えが良くなりだして、たくさんの日本語を覚えてきている。そして苦手だった読書も、今ではみんなと同じかそれ以上のスピードで読めるようになっている。俺は出来損ないながら、アルファとしての能力を手に入れたらしい。あとは経験を積み、更に吸収を続けていくだけだ。経験を積めば積むほど、アルファは吸収率がよくなり仕事の効率が上がっていく。アルファとしての生活はこれから始まるといっても過言ではないのだろう。  俺は成熟が早かった。でも、それでいい。仕事のできる才川君とようやく今、対等な位置まで来ただろうから。いつか……俺が才川君を養えるくらいにならないといけないんだからさ。  才川君との交際が始まった。  こんな普通のおっさんでごめん、と何度思っただろうか。才川君はおしゃれで若くて、出会った頃と変わらず見た目はチャラい。だけど、見た目だけが真面目な俺と違って、彼は根の真面目な男だ。家で黙ってパソコンに向き合う姿はとてもじゃないが近づけない。その集中力はさすがプロといったところだ。  才川君と交際をはじめ、彼の家に通うようになって、仕事をしている彼のために俺は料理を作るようになりだした。もちろん作ったことなどない。料理本を買ってきて、書かれている通りに作るのが関の山だ。だけど、自分ならそれくらい出来る気がしたんだ。案の定、うまく出来た。月日が流れるたびに俺のレシピも増え、本を広げずとも作れるようになりだした。買い出しも今では楽しい。 「ルイ、今日は何が食べたい?」  俺の隣を歩きながら、ん~と考え、コロッケ、と答える。 「コロッケ? 難しいこと言うなぁ。あれはヘッドで揚げるからうまいんじゃないのか?」 「そうなの? でも大丈夫だよ。タケさんお料理上手だから、サラダ油でもおいしく揚げられるって」 「今までのコロッケ、美味かったか?」 「え? うん。まずいなんて思ったこと、一度もないよ?」  どうだったかな?と思い出そうとしたようだが、途中でやめたのがよく分かった。 「ほんとかよ」 「ほんとだって~」  そう言って俺の腕に絡みついてくる。  こんなおじさんに、才川君はいつだって無邪気だ。 「あー、でもピザも食べたいなぁ」 「いきなり贅沢品だな」  あははっと声を上げ、才川君は食品売り場に駆け出すと、俺を振り返り言った。 「今日は俺も手伝う。タケさんの好きなシチューにしよっか」  そのキラキラした子供のような笑顔はまぶしくて、俺はたまらず目を細めた。 「あぁ、いいな。じゃあ、コロッケとシチューにしよう」  やった、と歯を見せ笑った才川君は「ジャガイモいっぱい買おう」って俺の持つ籠にたくさんのジャガイモを詰め込んだ。こんなに要らないだろと思ったけど、楽しそうに買い物を手伝ってくれる彼に、まぁいいかと諦めることにした。腐る前に使い切ればいいだけの話だ。今はただ、笑う彼を見つめていられることが、幸せで仕方なかった。
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