おはよう

1/1
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ

おはよう

「おはよう。ののか。朝だよ。」 「おはよう。たろう。起こしてくれてありがとう。」  ののかはベッドから起きるとカーテンを開けた。  たろうは家庭型万能ロボットだ。量販されている。  一家に一台と言っていいほどたろうは普及している。  家事全般をしてくれる。ののかの体調管理もたろうの仕事だ。  ののかが食卓についた。毎朝の習慣のスムージーが置かれている。  一日の始まりにふさわしい、エネルゲンだ。  ののかはスムージーを飲み干すと、胸についているボタンを押してその日の服を決める。  ののかのAIには300通りの服のデータが入っていて、ボタン一つで服が着替えられる。  ののかはヒューマノイドでたろうよりも見た目は精巧にできていて、人間と区別がつかない。故に服を着ないと裸で外を歩くことになってしまう。  しかし、服を閉まって置くスペースなど、現在の世界にはないのだ。  一部屋当たり8畳ほどのスペースで高層マンションがびっしりと建てられている。  管理者は人間なので、よくできたヒューマノイドは裸で歩いているように見えないため、画像で洋服を着ているように見える装置がついている。  この世界はののか達のような仕事に特化したヒューマノイドがすべての産業を担って経済を回している。  よその国も似たような形で経済を回している。  もう、愚かな戦争は起こらない。  管理者はこの世界に4人ほどいて、人間の脳を内蔵したAIだ。脳は人間の体の中で一番の長生きだと言うが、本当にその通りで、脳だけが元気で働いている。    管理者は人間が絶えないように、人間には精子や卵子の提供を義務付けている。健康な男女に限り、男子は13歳から。女子は卵子が成熟する15歳からクリニックに月に一度は通って、精子と卵子を提供する。  そうして常にあちこちのクリニックで人工授精をして、生まれた子供は若い疑似夫婦の元で育てられる。  疑似夫婦は人間でも、精巧なヒューマノイドでも構わない。監理者が選んだ人間らしさをきちんと教えられると定められた、疑似夫婦を選ぶ。  性別に関係なく、ペアであることが望ましい。要は、人間らしさを教えられれば良いのだから。  疑似夫婦になると、仕事は一切行わず、子供に愛情を注ぐことが一番の仕事になる。学校にも行かせ、人との関りも覚えさせる。そうして、人間らしい脳を持った子供を育て、この先の人類も繋いでゆくのだ。  管理者になれる次の脳を育てるために、管理者たちは、必死で子供を育て上げる。  そうして、人類は脈々と命をつなげている。  今は3020年。  ロボットたちが人間の欲望を学ばなければ、人類はこのようにつながるはずだと、管理者たちは必死で、もっと広い世界を求めて、自分の持つ地域を広めようとする欲望を抑えている。  その欲望が抑えられている間は大丈夫だろう。  もし、AIにその欲望が刷り込まれてしまったら。人類はまた一からやり直して、この平和な管理社会を築きなおさなければならないのだ。 【了】  
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!