盲目の常識

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私はいつも忘れ物をしてしまう 「傘を忘れたから先に行ってて」 まだ雨が降っているのに 喫茶店の傘立てに置き忘れた傘を取りに 私は一人 みんなから離れて別の方向へと歩く 道すがら 雨に濡れた綺麗な花や センスのいいお洒落な服を着た人を眺めて 私の歩調は次第にゆっくりと私を取り戻す みんなは「一人ぼっちは寂しいでしょう?」と言うけれど 私はみんなと離れて漸く安心して呼吸する もうみんなに合わせなくて済むのだと 「一人ぼっちは寂しいでしょう?」 よく人はそう言うけれど 私はね みんなと一緒だと少しだけ楽しいけれど でもそれ以上に みんなの濃密で粘つくような空気の中で溺れてしまって そこは異国の地よりずっと異国で 呼吸する事すら出来なくなってしまう だから私はいつも忘れ物をする みんなから離れる為に 一人ぼっちになる為に 自分の呼吸を取り戻す為に そしてホッとする みんなが寂しいと言う一人ぼっちになれた事に みんなの常識はとても窮屈で 盲目的で的外れだから だってみんな気付かなかったでしょう? まだ雨が降っているのに 私が傘を差していない事に 誰も 気付かなかったでしょう? (2021年3月23日作の詩) <無断転載・複写等禁止> まだ雨が降っているのに 私が傘を差していない事に誰も気付かず 雨に濡れている私に 傘を差し掛けてくれる人もいない だから私はそんな人達から離れて たった一人で雨の中を歩いてゆく たとえこの雨が土砂降りの氷雨になって 凍え死んでしまったとしても 見せかけだけの優しさを纏った冷たい人達に合わせて生きるより そのほうがずっとマシだから (4月24日 付記)
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