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ひみつのなにか。
僕のおじいちゃんの話をしようと思う。
つい先日亡くなってしまった、僕の母方の祖父の話だ。
亡くなる半年ほど前に倒れて、それからはずっと入院して亡くなってしまったわけなのだが。そうなるまでのおじいちゃんはとても優しくて親切な人で、僕と弟もかなり懐いていたのだった。
田舎の〇〇村というところ、大きな日本家屋に住んでいた。
おばあちゃんの方が早くに亡くなってしまって心配していたものの、彼はあの年代の男性としては非常に社交的な人だったし、近くに親しい親戚や友達も住んでいたので晩年が寂しいなんてことはきっとなかったことだろう。
お母さんは心配して毎朝のように彼と電話をしていたが、まるで大阪のおばちゃんのようによくしゃべる人で、近所づきあいもいいものだから話題に欠かない人だったと記憶している。
『実は、英語を習い始めたんだよ!ほら、最近の日本の歌って、横文字のものが多いだろう?韓国の男性グループとか、英語の歌もすっごく歌うじゃないか。私ももっと若い頃から英語を習っておけばよかったと思っててねえ……』
『はははは!そりゃ、男なら普通のことだ、あんまり叱ってやらんな!私だってなあ、子供の頃道に落ちてたえっちな雑誌を拾って、友達と回し読みくらいしたもんだぞ?』
『スマホを買うべきかやめるべきか、非常に迷ってるんだが……あれ、私みたいな年配者にも使えるもんか?文字がすっごく小さいんじゃないかと思って心配してるんだが……あ、というかこの辺鄙な村で、電波って届くもんなのかねえ?』
まあこんな具合。
バリバリネットをやるようなハイテクなおじいちゃんではなかったけれど、テレビで若い人の話題も取り入れるし、何より若い人の趣味を知ろうと頑張るところがみんなに愛される要因だったのだろう。
優しくて穏やかで、ちっとも怒鳴ったりしない、僕達の大好きなおじいちゃん。ただひとつだけ、僕はそんなおじいちゃんに対して“得体が知れない”と思っていることがあったのだ。
そう、おじいちゃんが住んでいた、あのお屋敷のことだ。
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