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本日分の面会を全て終えると博士は、すぐに次なる研究に取り掛かる、なんてことはなく、宿題を終えた子供のように嬉々として持ち運び用のゲーム機で遊び始めた。
僕はその隣できびきびと片付けを進める。余った資料をファイルに挟み、机を拭き、予備で作っておいた薬は……ちょうど喉が渇いていたので、全部まとめて飲み干した。
当然、何の味もせず、薬はただ単純に僕の喉を潤しただけだ。
ゲーム機の画面に夢中な博士の横顔に、僕は溜息を吐きながら話しかける。
「性悪な商売、っていうのは事実ですよね。着色しただけの普通の水を売って、善良な患者から大金を巻き上げているんですから」
僕の皮肉に、博士はゆっくりとゲーム機から顔を上げた。
「なに、私は別に嘘は言っていないさ」
「え?」
「『馬鹿が治る薬』なんて都合の良い話に踊らされるような馬鹿親どもには、実際のところちょうど良い薬だろう?」
博士は悪びれるどころか、むしろ良いことをしてやったと言わんばかりに胸を張る。あまりの図々しさに僕は肩をすくめた。
「はぁ……本当に性悪だ。いつか『やっぱりうちの子は馬鹿じゃないか! 騙したな!』なんて訴えられても知りませんからね」
「いや、その心配はないよ」
なぜか確信に満ちた口調の博士。純粋に気になり、僕は「なぜです?」と尋ねてみた。
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