馬鹿につけるくすり

2/11
前へ
/11ページ
次へ
 薬の調合を終えた僕は、応接室というか診療室というか、あるいは実験室というか、とにかく治療希望者との面会を行うための部屋に行き、カシコナールAに関する説明用資料を2部テーブルに並べて置いた。 「どうぞ中へ。治療前にこちらの部屋で薬の説明と、同意書の記入をお願いしています」 「同意書? ずいぶんと本格的ですわね」 「ですわねー!」  ちょうど良いタイミングで、本日最初のが別の助手に連れられて登場した。 「初めまして。当所で博士の助手を務めております、和頭と申します。正木様ですね?」 「左様でございます」 「ございまーす!」 「こちらが患者の?」 「ええ、息子の卓馬です」 「こんにちは、卓馬くん」 「ちはー!」 「こら! ちゃんと挨拶なさい!」  年相応か若干幼いぐらいの無邪気さを見せる卓馬くんに正木さんは目を吊り上げる。  僕は二人をテーブルへ促し、手筈通り同意書の作成と資料を用いた薬の説明を行ってゆく。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加