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電車を待つ間、椅子に座り足をぶらぶらさせながらおにぎりをゆっくり噛み締めながら食べた。だって次いつご飯が食べれるか分からないから、最後のご飯になるかも知れないから。
一両だけの電車が来ておじちゃんと乗り込んだ。僕たちのほかに四人くらい乗っていた。
「舞木、三春、要田、船引の順で停まる」
「おじちゃんあれ見て!大きい川があるよ」
「阿武隈川だ。来月に河川敷で花火大会が行われるんだ」
「そうなんだ。行ったことないから行きたいな」
「三春でも船引でも夏祭りはある。今年は無理でも来年じいちゃんとばあちゃんに連れていってもらえ」
「うん、分かった!」
椅子に座り窓から外を眺めた。おじちゃんがずずっと鼻を啜りながら靴を脱がせてくれた。
「よし、着いたぞ」
おじちゃんのあとに続いて電車をおりた。
改札口を出ると緑色の作業着を着たおじちゃんが待っていた。
「先崎すまん」
おじちゃんが頭を下げた。
「いいってことよ。本当は駄目なんだが、子供の命がかかっているからな。K市に住む猪狩煌っていう名前の孫がいないか町内放送をしたら、すぐに名乗り出てくれたから、探す手間が省けた。行くぞ、時間がない。大事な友だちを逮捕させるわけにはいかないからな」
「恩に着る」
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