緑色のおじちゃんは僕のヒーロー

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田んぼのなかにポツンと一軒だけ建つ家の前で車が止まった。 「煌くん!」 家のなかから飛び出してきたのは、おじいちゃんと同い年くらいの男の人と女の人。 顔は覚えていないけど、毎週電話で話していたから、声は間違いなくじいちゃんとばあちゃんだった。僕が聞き間違えるわけないもの。 「きらのじいちゃんとばあちゃん?」 「あぁ、そうだ。よく来たな」 「遠かったでしょう」 「電車で来たんだ」 「そうか、そうか、良かったな」 泣きながら抱き締めてくれた。 「後藤さん、孫を連れてきてくださりなんと礼を言ったらいいか」 「礼なんかいいです」 「猪狩さんそれよりも急いで県中児童相談所に連絡してください。後藤さん、このままだと誘拐で逮捕されます」 「なんだべな。電話番号わかんねぇぞ」 先崎さんが調べてくれてすぐに連絡をしてくれた。後藤さんを逮捕しないでください。じいちゃんとばあちゃんが何度も頭を下げて頼んでいた。 ほっとしたら何だか眠くなってきた。それからのことはよく覚えていない。目が覚めたら、病院のベットの上で、じいちゃんとばあちゃんが心配そうに顔を覗き込んでいた。 「いいか煌、からだの中にいる悪い虫をやっつけるのにしばらく入院が必要なんだ。夏が終わる頃には退院出来る。そしたらじいちゃんとばあちゃんと暮らそうな」 「うん、ママは?るるちゃんは?」 「それはその……」 もしかして聞いちゃ駄目なことを聞いた? だってじいちゃんとばあちゃんの顔から笑顔が消えたから。
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