第5章 元の世界へ

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 「おい、おれたちが一番乗りのはずなのに、抜け駆けしやがったやつがいたみたいだぜ」  僕らの姿を認めるなり、一人の男が口を開いた。セリフは気さくそうだけど、僕らへの敵意に満ちていた。  「抜け駆けって何のこと?」  「しらばっくれるな! 人間とエルフは敵対関係で国交断絶している。エルフの国との国境には軍隊まで配置されていたが、最近軍隊のトップがうちの組織の親分からの賄賂を受け入れて、うちの組織の人間が国境を素通りできることになったことを知らなかったとは言わせねえぞ!」  組織の人間? つまりヤクザなのだろう。エルフの国に渡ってくる人間はみなヤクザだったのか? キンバリーたちを見て、なんてひどい連中なのだろうと憤ったが、人間の中のひどい連中だけエルフの国に渡ってきたということか?  「つまりおまえたちは組織の命を受けて密貿易目当てにエルフの国に潜入しようとしていた、ということか?」  「そうだ。人間の国じゃおれたちヤクザ者はずっと肩身狭い思いをしてきたが、新天地のエルフの国で成り上がってやると決めたんだ。エルフはおれたちが使えない魔法は使えても、お人好しばかりらしい。あいつらを騙して食い物にして、好きなだけ金も女も手に入れてやる!」  どうやら僕らはエルフの国に戻ってきたといっても、時間的には過去に来てしまったらしい。人間がエルフの国にやって来るようになったのは僕が生まれる10年ほど前からだと聞いている。つまりここは僕らが死んだときから見て25年ほど前の世界なのだ。  「抜け駆けは裏切りと同じ。生かしておくわけにはいかねえ!」
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