第5章 元の世界へ

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 少年の顔は見れば見るほどあの男の顔に似ているような気がして不快になった。少年は腰が抜けたように地面に座り込んでいる。座り込んだ辺りの地面が濡れて変色している。小便を漏らしたようだ。  近づいてくる僕らを見て、ひっと声を上げた。父さんが少年の目の前でしゃがみ声をかける。  「ちょっと話を聞かせてもらうよ。まず君の名前は?」  「キンバリー」  「年は?」  「15歳」  もしかしたらと思ったが、本当にキンバリーだった。25年後にはふてぶてしいほど憎たらしい顔になっているが、目の前のキンバリーは怯えた子ウサギのような童顔の少年だった。思わず父さんと顔を見合わせて、僕らはニヤリと笑い合った。  「おれはまだ何も悪いことをしたことがない。だから殺さないでくれ」  「ごめんな。君を生かしておくと、僕らの方が殺されるんだ――」  そのとき、腰を抜かして動けなくなっていたはずのキンバリーがバネに弾かれたように立ち上がり、雷の胸に何かを突き立てようとした。雷は完全に油断していた。僕のスキルの力で間一髪それを弾き飛ばした。銀色に光るそれは長く鋭利なナイフだった。
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