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「ライのおかげで死なずに済んだ」
「父さん、礼はいいからキンバリーを!」
「分かった」
父さんを殺し損なったキンバリーは逃走したが、ドラゴン10匹が追跡し、崖の手前で完全に包囲した。キンバリー少年は火炎の集中砲火を浴び、1分以上も火に包まれ続けた。そして人型の黒炭になった。
「終わったな」
「これで僕らはキンバリーに殺されることもなくなったし、母さんやイズミがキンバリーに寝取られることもなくなったんだね」
「ああ。だから、殺されて異世界で人間に転生する未来もなくなった。僕らの魂もじきに消滅するだろう」
なるほど。言われて見ると、体が少しずつ透明になっていくのが分かる。
「父さん、まずいよ。体が消えてしまう前に、この体を風飛と雷の魂に返してやらないと!」
「そうしよう。また入れ替わるとするか」
じきに僕らは父さんのスキルの力で風飛と雷に借りた人間の肉体を失うことだろう。でも喪失感なんて微塵もなかった。僕らはこれからキンバリーのいなくなった世界で、エルフとして幸せな人生を生きるだけだ。
人間なんて嫌いだ! でも人間として生きたこの半年間、それなりに楽しい時間だったなと最後に思えた。
【完】
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