プロローグ

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 「ライ、そろそろ起きなよ」  ベッドで寝ていると、部屋の電灯の上から話しかけられた。ライオネルは高い場所が大好き。いつも僕を上から見下ろして笑っている。  ライオネルが電灯から飛び降りて、僕の枕元に着地した。ライオネルは茶トラの猫。もともと野良猫だったのを5年前に僕が拾ってきた。だから正確な年齢は分からないけれど、おそらく7歳くらいか。猫の1年はエルフの7年に相当するらしい。とするとライオネルはエルフでたとえれば50歳くらいということか。  僕がそれでもまだグズグズとベッドから出られずにいると、ほっぺたの辺りをなめられた。夜更かしばかりして朝起きられないエルフはみな猫を飼えばいい。夜は早く寝なよと体をすりすりしてくるし、朝は早く起きなよと顔をなめてくれる。目覚まし時計で起きるより100倍は気分がいい。  ライオネルという名前は古代のエルフの英雄の名から取った。猫はエルフの友達とするために、神が僕らエルフといっしょに創造した生き物。つまり猿から進化した人間より神に近い存在。人間は猫より自分たちの方が上だと思い込んでいるらしい。身の程を知らない野蛮人め! 申し訳ないが、人間のすべてを好きになれない。  「早く起きないと学校に遅刻するよ。またイズミに怒られてもいいの?」  ライオネルにそうたしなめられて、僕はようやく起き上がった。昨日イズミにもう遅刻しないと約束したばかり。一日で約束を破るわけにはいかない。  それにしても、そのことは教えてないのに、ライオネルはなんでも知っているぞというドヤ顔で僕を見ている。猫が人間より上なのは当然だけど、もしかすると僕らエルフよりも尊い存在なのかもしれない。
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