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父さんはエルフ王室の流れをくむ名門ヤブーチ家の家長であり、超人的スキル〈神の権能〉を操る天才。どんな簡単なスキルも使いこなせない劣等人種である人間など、虫けらのように叩きつぶすことができるだろう。
それなのに愚かなキンバリーはニヤニヤ笑い続けている。ただの強がりだろうが、死ななければ直らない愚かさがあるのだとしたら、僕が今見ているものがそれなのだろう。
「何か勘違いしてるようだ――」
探るような目つきでキンバリーが何か言い出した。
「確かにおれはあんたの元奥さんの浮気相手だったが、あのイズミという娘とは何もない。ほかに誰もいない時間にあの娘と二人きりになったのは軽率な行動だったと言うなら謝るぜ」
謝ると言いながらキンバリーの態度は謝る人の態度ではなかった。相変わらず顔はニヤニヤしているし、頭などこれっぽっちも下げていない。
「おれはあんたの元奥さんの再婚相手になるつもりだ。つまりライはおれの息子も同然。おれがライの婚約者に手を出すわけねえじゃねえか」
「君はどこまで僕を見くびっているんだ?」
父さんは氷のような微笑を浮かべて、何かのスキルを発動させた。二人のあいだの空間に何かが大きく映し出された。まるで映画館のスクリーンのように、映し出されたものが動きだした。
映し出されたものを見て、キンバリーは青ざめたが、それ以上に僕が呆然となった。
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