プロローグ

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プロローグ

 僕は人間が嫌いだ。人間は僕らエルフをただ耳の長い人間くらいにしか思ってないが、エルフは神によって創造された神人。人間は所詮猿から進化した獣人。見た目こそ似ているが、その本質には天と地ほどの違いがある。  神人であるエルフの顔はみな美しい。人間にもエルフ並みに美しい者もいるが、そうでない者の方が多い。美しくないものは見たくないのに、人間の国が貧しいから、多くの者がエルフの国に出稼ぎに来る。エルフの国で単純労働や肉体労働に従事する者の半数以上が人間であると聞いたことがある。  人間の国が貧しいのはなぜか? それは彼らが争いを好み、いつも国が内戦状態で人間同士で殺し合っているからだ。  一方、エルフの国は女王を中心に争い一つなく平和に暮らしている。エルフに犯罪者はいないが、わが国に犯罪者は少なくない。犯罪を犯すのは出稼ぎに来た人間たちだ。人間を彼らの国に追い返せという主張に賛成する。  僕が人間を嫌う理由はほかにもある。彼らには貞操観念というものがない。パートナーがいるのに、平気で浮気する。わが国に出稼ぎに来る人間の中にも、エルフの女をたぶらかす者がいる。  「獣人の人間とのセックスは野性的で、エルフ同士のセックスでは得られない快感を味わえる」  と一部のエルフの女が噂し合っているそうだ。実に嘆かわしい。
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