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二人とも気が付いていないようだし、童心に帰って、悪戯しようか。私は足音を立てないように、二人から死角となる公衆トイレの陰に隠れる。
よし。あとは茂みの方に入って、裏から回り込み、背後から驚かす! そう心を弾ませていると、公園の入り口から「おーい!」という声が聞こえた。私は咄嗟に身を潜め、耳を澄ませる。
「二人とも久し振り、和菜だよー。元気にしてた?」
「和菜ちゃん! やっほー」
「もう、遅いですよ」
「ごめーん、実はバスに乗り遅れちゃって。あれ、せっきー、そのマスクどうしたの。風邪?」
「そんなところ。あと来てないのは三葉ちゃんか」
あー、和菜が来ちゃったか。悪戯のためだとしても、三人を心配させたり待たせたりするのは申し訳ないので、トイレの壁から顔を覗かせる。
「ソーリー、私もここに居るよ」
「わあああーーーーー!!」
「……ぎゃあああああああああああいっ」
関と星流のリアクションは、予想の斜め上を突いてきた。関は、ただひたすら私を指差して悲鳴を上げる。一方の星流は、暫くの沈黙の後に叫び声を絞り出すと、魂が抜けたような表情になる。そうだ、この二人、極度のビビリだった。特に星流は、特徴的なオーバーリアクションをするんだ。
「あれ、みっちゃん!? え、どうしたの?」
「ただドッキリを仕掛けようかなーって、隠れていただけ!」
「……んもう、みっちゃんって子供だな。久し振りー!」
「えへへっ。にしても、二人とも大袈裟なんだから。さっ、早く卒業式に行こう!」
和菜だけがまともに会話してくれた。男子より女子の方がメンタル強くてどうするのよ。このご時世、そんなことは男女に対しての偏見でしかないけれど。
私は軽い足取りで公園から出る。ちらりと後ろを向くと、柔和な笑みを浮かべる和菜、マスクの位置を調整する関、まだ悪戯の余韻が残っている星流と続いていた。
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