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私は知っていた
「え?」
私が、三人よりも災難に? そんなことはない。私はのんべんだらりと人生を謳歌してきた、ちょっぴり幸せ者な、ごく普通の会社員。……うん、そうだよ。
自身に言い聞かせている刹那、関が私の両肩をがしりと掴んで揺さぶってきた。
「単刀直入に言うよ、三葉ちゃん。もう気が付いているだろ! これが……これが幻覚だってこと!」
「そうだよ……。しっかり者のみっちゃんだから、死を否定してまであたし達を心配してくれているんだよね」
「でも、三葉さんは楽しいですか? 実際の三人とは違う幻覚の自分達と居て、幸せですか」
やっぱり。嫌だ。言わないで。現実を突き付けられたら、私は消えてしまう。再会なんて幻想だから、三人ともう二度と会えなくなってしまう。
これが幻覚だとは、薄々理解していた。それでも、ここに居たい。私の人生がバッドエンドストーリーならば、そもそもエンドロールなんて流れなければ良い。
「正気ですか? 今までの友情なんて、薄っぺらく脆い偽物だったのですね」
もう止めて。耳を塞いでも、三人の声は私の心臓を貫いてくる。そりゃあそうだ。全員私が創ったのだから。
「みっちゃん、目を覚まして。偽りの友達の温もりなんて、虚しさしか残らないよ」
「何より、人生はバッドエンドのストーリーだったとか、三人に失礼ではないですか! 終わり良ければ全て良しとありますが、結局は結末が悪くても、それまでの過程が大切なのですよ。四人の想い出を振り返っても、バッドエンドですか!?」
星流の言葉に、決心が揺らぐ。それは、ハッピーだったに決まっているだろう。けれど私が消えたら、三人の心が、より抉り取られてしまうのでは。私が全ての想い出を、燃やして灰にしてしまうのではと。
「怖いから、」
「俺等を、三人を信頼しろよ! 和菜ちゃん、星流君、そして俺なら、この世を生き抜ける。それを誰よりも解っているのは、三葉ちゃんだろ!?」
もう。そこまで説得されたら、決心なんて砕けて散ってしまうではないか。
そうだ。私は今から、死ぬのだ。
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