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俺の名前は、タカシ・ヤマモト。この世界では奇妙に聞こえるだろうが、元の世界では、むしろ平凡な名前だった。……という言い方からもわかるように、俺は生粋のレナトゥス人ではない。いわゆる転生者というやつだ。
このレナトゥス・ワールドは、元の世界から見れば、完全にファンタジーの世界。魔法とかモンスターとか、空想上の概念だったものが、しっかりと実在している。
転生して魔法が使えるようになった俺は、最初は物珍しさもあり、魔法使い系の冒険者として働き始めた。
冒険者の知り合いの中には、生粋のレナトゥス人だけでなく、俺のような転生者もおり、それこそ嬉々として剣や槍を振るう戦士系もいたのだが……。
魔法使いとして、過酷なモンスター討伐を続けるうちに。
ふと、俺は馬鹿らしくなった。
「魔法……。なんだか思ってたものと違うな?」
確かに、火炎魔法で敵を燃やし尽くしたり、落雷魔法で電撃を浴びせたりするのは、ゲームみたいで楽しい。
だが、これって別に魔法を使わずとも、元の世界でも普通に出来たことではないだろうか。火炎放射器やスタンガンを使えば、同じ効果が得られたのではないだろうか。
もちろん、この世界には、そんな便利な道具はない。だから魔法を使う。しかし、魔法を使えば魔力を消費して、ドッと疲れる。火炎放射器やスタンガンならば、そんな思いはしなくていいのに……。
というわけで。
転生者の中には、冒険者なんて辞めて、便利な道具の開発に従事する者も多いらしい。前世知識を活かす、というやつだ。
俺も、それに倣うことにした。俺の場合は、前世が薬学系の大学生だったこと、及び、ここでは一応は魔法使いを続けていることから……。
魔法薬メインで魔法器具も扱うお店『ヤマモト・ポーション・ショップ』を、三年前に開いたのだった。
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