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「それが、渚町警察署で起きた事件の際の貴方たちの動向ですか」
「そうですよ、野次馬に行ったことをこれほど悔いたことは無い」
平穏な港町で詳らかとなった、24年にわたる女児の監禁。
そのニュースは小さな田舎町に轟き、警察署前は野次馬と報道陣であふれ、町は今までにない騒めきで包まれた。
そんな中起こったさらなる事件。
信者により、多くの民間人が轢殺され、警察官にも殉職者が出たという。
ばらまかれたガソリンにより、その後爆発を伴う火災すら発生したと聞いた。
未だに正確な死傷者の身元が割り出せておらず、移送の手筈となっていた幹部も、一名の遺体が事件現場より発見されたが、他七名の所在は不明のままだ。
「しかし、フルタさんはどうして移送の立ち合いに? 監禁事件の被害者たるあなたは、警察の元で保護されていたのでは?」
「病院で検査をするために入院していたよ、夜中に頑張って窓から出てね、近くの部屋から服とか借りたりして、周りの人の真似してちゃんと出て来たよ」
「そこまでしてどうしてあの場所へ?」
「一応私の親だもの、もう会う事も無いのかと思ったら、最後に一度見ておこうかと思って」
「というか、フルタさんと苅田さんはその後どうして警察に行かなかったんですか。現場に居合わせて、あまつさえ追いかけられたとあれば警察だって邪険にはしないでしょう。何故そんなリスクの高いことを」
後藤はそう訝しんだ。
それはと口ごもった私に、フルタが目配せしてきた。
そして助け船です、とでも言わんばかりに泥船が差し向けられる。
「私が脅したの」
フルタは朗らかにそう言った。
「え、どうして」
後藤の困惑した声に思わず頭を抱える、どうにか誤魔化せないかと苦心していた先にこれだ。
私が胃を痛めているのに気付かずフルタは続ける。
「私、脱走したはいいけど、生まれてからずっと「救済の園」の中で生きて来たから、ほかに行く当てが無かったの。だから苅田に「病院に帰りたくないから匿って」って言って。あ、そういえば苅田の家まで行ったら、私の顔がニュースに流れちゃって、苅田焦っていたよね」
「それで一緒に逃げたんですか。苅田さんもどうして」
後藤の言い分ももっともだった。
「まあ、命の危機にさらされて心底ビビっている時に「私を連れてきちゃったからもう誘拐犯だね」と微笑まれたら、もう全部諦めたと言いますか。実際警察に届けず家に置いていた時点で誘拐犯と言うのは変わりありませんし。まあ、そんな感じです。あまり思い出したくない事なので、私の家からジャスパーにたどり着くまで、何があったかを説明して行きましょう」
後藤も矢口も何か言いたげだったが、無視した。
なにせここから、深夜の逃走が始まってしまうのだから。
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