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「ふえーん!! せんぱーい!!」
メディは帰ってエニーに泣きつく。
「あらあら、どうしたのメディ? 確か、ニホンって国で薬を売るように師匠に言われてなかったっけ?」
ガチャリと音がした。メディたちの師匠が帰ってきたのだ。
「どうした、メディ。その様子じゃ失敗したようじゃな」
「うっうっ、師匠……」
「一個でも薬を売れなければ薬屋の称号は与えないと言ったじゃろう?」
「はい、でも……」
メディはポロポロ涙を流す。
「師匠に言われたように、それっぽい服を着て、それっぽい喋り方して、『クスリ』って字も覚えたのに……。まさか逆に読むだなんて……。それに薬屋に資格があるなんて聞いてませんよ! お店開くのに許可がいるんですか!? しかも身分証明書も意味なかったんですよ!? うわああん!!!」
「いや、薬屋の称号だって資格みたいなもんだから」
エニーが突っ込む。
「そうですけど、試験のときは、師匠が薬屋って名乗っていいって言ったんですもん! うわああん!!」
師匠がメディをなだめる。
「わかったわかった。今回は厳しすぎた。次は少し難易度を下げよう」
「メディ、今夜はお疲れパーティー開いてあげる。次、頑張ろう! ね!」
「ししょう……、せんぱーい……」
感極まったのか、メディは大声で泣く。
「うわああん!!!」
メディはしばらく泣いていたが、泣きつかれて寝てしまった。エニーはメディの背中を優しく擦りながら師匠に声をかける。
「あらあら、寝ちゃったわ。ところで師匠? メディがこんなすぐ帰ってくるなんて、相手はどんな客だったんでしょうね?」
「ああ、あいつはワシの孫じゃ。ワシの息子家族が向こうに滞在しておるからな。向こうの事情には詳しいから、試験手伝ってくれと頼んでおいたんじゃ。まあ、ちと意地悪じゃったかもしれんが。こんなに早く音を上げるとは思っとらんかったからの。また今度改めて手伝いを頼むことになりそうじゃな……」
「へえー」
そこにメディのローブからポロッと紙が落ちる。
「あれ、師匠?」
「ん、何じゃ?」
エニーが紙を拾う。
「……はは、ほらこれ」
「んー? おっと、こりゃやられたわい」
『よっ、じいさん。あのメディって子、いい薬売ってるみたいだな。あの子に内緒で薬はもらっておいたよ。お金はツケでお願いしまーす。盗賊の孫より』
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