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「着物が乱れる。せっかく、こんなに綺麗にしてもらったんだから。ペコペコ頭を下げるな」
ふっ、と口の端を上げて、微笑んで。
「お辞儀する時は、まず相手に向かってきちんと挨拶をして。それから、背筋を伸ばして、首は曲げず、腰から下げろ。心の中でゆっくり五つ数えて。1、2で下げて、3で止めて、4、5で戻る」
「……ありがとうございました」
言われるまま、レイラさん、心の中で五つ数えて、ゆったりお辞儀した。
戻って『彼』の顔を再び見る、と。
呆気に取られたような、『彼』の顔。
「へ、変でしたか!?」
「……いや、とても優雅だった。ただ……」
「ただ?」
「……あんまり綺麗で、見とれた」
満面の笑顔で言われて、レイラさん、心臓がばくばくする。
「さ、行かないとね。挙式が始まるだろう?」
促されるまま、再び部屋を出て。
やや早足で歩みを進めていき。
(あれ?)
苦しくない。
それに、スタスタ歩ける。
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