第2話 こんな展開で恋に墜ちるとかあり得ないんだけど

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「娘の玲蘭です」  お父さんの声を聞いて。 「よろしくお願い致します」  しっかり前を見て、挨拶する。  それから。  いち、に、さん、し、ご。  心の中でゆっくり数えて、背筋を伸ばして、お辞儀する。 『彼』が「綺麗だ」と言ってくれた時のように。  静かに腰を下ろして。  前にも増して、視線を感じるレイラさん。  親族皆に食い入るように見つめられ、一生懸命平静を装いながら。 (お、遅れそうになった子だって思われてる!? どうしよう!?)  動揺しまくりで、緊張のあまり伏せ目がちになってしまって。  心の支えは。 『あんまり綺麗で、見とれた』  魔法の呪文みたいに、レイラさんの中でリフレインする言葉。  名も知らぬ『彼』の存在が、レイラさんの心の中で急成長してしまっている……ことに、レイラさん自身は、まだ気付いてない。  そして。  魔法の呪文は、実際にレイラさんを、とっても綺麗にしてくれてる……ことにも、全くレイラさんは気付いてなかったりする。 『今時、なんて奥ゆかしい、礼儀正しいお嬢さんだ』  なんて思われてることを知るのはまだ先のこと。 (あー、とっとと早く終わってー!)  なんて、罰当たりなこと考えていたレイラさんだった。
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