第2話 こんな展開で恋に墜ちるとかあり得ないんだけど

2/10

5人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
『苦しいって言うから、帯を緩めただけだろ!』  絶叫に近い声で言われて、レイラさん、息苦しさが改善されていたことに初めて気付き……自分の勘違いに気付いた。  そもそも自分で踏んで裾を乱して、その勢いで襟元も崩れてしまっただけだったのに。 (あー! どうしよう!?)  米突きバッタみたいにひたすらペコペコする少女の姿に、ため息をつく男性。 「……河相(かあい)さま!」  従業員の男の人が、ひきつった声を上げる。 「あ、ちょうどいい。彼女を目につかないように何処か部屋を見繕って連れていって。あと、誰か呼んで支度してやって」 「はい! かしこまりました!」  男性は平身低頭で畏まる従業員の様子を平然と受け止めて、それから小さく舌打ちする。 「つまんないことに関わっちゃったな」  独り言のような囁きを、レイラさん、しっかり聞いていた、けど。  何と言われても、とにかく申し訳なさでいっぱいで。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加