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『苦しいって言うから、帯を緩めただけだろ!』
絶叫に近い声で言われて、レイラさん、息苦しさが改善されていたことに初めて気付き……自分の勘違いに気付いた。
そもそも自分で踏んで裾を乱して、その勢いで襟元も崩れてしまっただけだったのに。
(あー! どうしよう!?)
米突きバッタみたいにひたすらペコペコする少女の姿に、ため息をつく男性。
「……河相さま!」
従業員の男の人が、ひきつった声を上げる。
「あ、ちょうどいい。彼女を目につかないように何処か部屋を見繕って連れていって。あと、誰か呼んで支度してやって」
「はい! かしこまりました!」
男性は平身低頭で畏まる従業員の様子を平然と受け止めて、それから小さく舌打ちする。
「つまんないことに関わっちゃったな」
独り言のような囁きを、レイラさん、しっかり聞いていた、けど。
何と言われても、とにかく申し訳なさでいっぱいで。
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