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「欲しい! 四つ買おうよ。おじいちゃんとおばあちゃんにも。もしいらないって言われたら、またあたしとパパで食べればいいし」
「そうだな。うお、すごい種類あるなあ。どれにする?」
話しながら辿り着いた冷菓が並ぶケースを上から見て、迷った末に違うものを四個選び出した。
「じゃあさっさと帰るか! 溶けないうちに」
レジで精算を済ませた父が言うのに黙って頷き、自動ドアを通り抜ける。
「ねえ、パパ。ラムネちょうだい」
家に向かって歩き出してすぐに頼んだ真理愛に、父は黙ってエコバッグからラムネ菓子を取り出して渡してくれた。
「ありがと!」
容器を軽く振ってみた真理愛に、隣の父が口を開く。
「……今はまだおじいちゃんたちには見せるなよ。パパが先に話すから」
「ん。わかった」
素直に頷き、菓子をポケットに仕舞った。
祖父母をいたずらに驚かせたくない。それは真理愛も同じ気持ちだ。
──錠剤が、……「薬」が悪いんじゃない。なんでも使用法なんだ。あたしはもうそれくらいちゃんと理解してるのよ、パパ。
そして父にも伝わっているからこそ、何を問い質されることもなかったのもまたわかっている。
「次の『薬』は普通のでいいよ。今までずっとごめんね」
「わかった。でも謝ることじゃないだろ」
思い切って切り出した真理愛に、父は軽く窘めるように口にして娘の肩を抱き寄せた。
~END~
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