運命の出会いはハワイの空港

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「結構しっかりはまり込んでいますね。なにか固いものを引っかけたほうが良いかな」  後半は独り言のように言って、彼はアタッシュケースを開けた。  そしてなにか工具のようなものを取り出し、それを差し込んで、ぱぱっとタイヤを救出してくれたのである。 「取れましたよ。少し痕がついてしまいましたが……すみません」  膝をついたところから果歩を見て、にこっと笑ってくれた彼。  果歩はかえって恐縮した。 「い、いえ、そんな! 本当にありがとうございます!」  確かにキャリーケースには擦れた痕が少しついていた。  お気に入りなのだから、惜しく思わないわけはないが、このままはまりこんだままになるよりずっと良いに決まっている。 「いえいえ、どういたしまして。お嬢さんのお靴がはまらなくて良かったですよ」  彼はもう一度、にこっと微笑んで、そう言った。  お嬢さん、なんて言われた上に靴の心配までされて果歩ははっきり、どきっとしてしまった。鼓動がとくとくと速くなる。  これほど優しく、親切にしてもらえるなんて思わなかった。  しかも知人なんて誰もいない、異国の地で。  純粋な嬉しさのほかに、感動まで湧いてくる。
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