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逢見は嬉しそうに笑みを濃くして、頷いた。
「ええ、意外なご縁ですね。乗り心地はいかがでしたか?」
そう聞かれて、果歩の胸は、とくとくと心地良く騒ぎ出す。
まさか、乗ってきた飛行機の操縦士さんだったなんて。
その方とこんなふうに話をしているなんて。
いや、それよりさっきあれほど優しく助けてもらってしまって……。
果歩は強い感動を覚えた。
「は、はい! とても良かったです。私はたまに酔っちゃうことがあるんですが、今日はそれもなくて、リラックスして過ごせました」
頷いて、素直な気持ちを口に出す。
本当にフライトは快適だった。
果歩の感想に、逢見は嬉しく思ってくれたようだ。もっと笑みになった。
「それは良かったです。これからも是非、ごひいきに」
そんなふうに言うので、果歩はなんだかおかしくなってしまった。
お店のようだ、と思ったのだ。
いや、交通手段のサービスなのだから、まるではずれではないけれど。
「もちろんです! 帰りもお世話になります!」
「ええ。違う操縦士でしょうけれど、よろしくお願いしますね」
しかし、言われたことには少し寂しくなった。
だが違う操縦士になるなんて当たり前のことだ。
行きの飛行機の操縦士が、そのまま帰りも担当になるなんて、ないとは言わないが、かなり確率は低いだろう。
だから彼とはここでお別れで、話すのもおしまいであるはずだ。
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