海辺の再会

2/7
前へ
/151ページ
次へ
 その通り、お昼少し前の時間に果歩は出発した。  ランチは街中で食べる予定だった。まだランチには早めの時間だし、すぐにでなくてもいいかな、と思う。  キャリーケースは空港で受け取れるように手配した。  手荷物だけの身軽な格好になって、街中へ出る。  海が見たいな、と思った。  夕方にも夕焼けを見たいと思っていたけれど、明るい中で輝く海も見たい。  それに、海辺は潮風がとても気持ちいいのだ。暑いというのに風は爽やかで、心地良く過ごすことができる。  少し散歩でもしよう、と思った果歩は、海辺のほうへ向かう。  そして数日前にも一度、散歩したあたりを歩きはじめた。  泳げるビーチは観光客や、それを相手にしたお店やサービスでとても賑やかで、そういうところも行ったし、楽しんだけれど、もう帰るという日なのだから静かに過ごしたい気持ちだった。  よって、敢えて泳げないエリアを選んで、きらきら輝く海を見ながら海沿いの道を歩いていたのだけど。 「……あっ!」  するっと、不意に首元からなにかが抜けた。  それはパステルピンクのストールだ。  日よけも兼ねて、首に巻いていたお気に入り。  落ちる、と思ったのだけど、海風がちょうど吹いてきたようで、ふわっと浮き上がってしまう。  果歩が伸ばした手は空を切った。
/151ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1215人が本棚に入れています
本棚に追加