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「休暇は日本だったり、渡航先だったりするんだ。いろんなところへ飛ぶからね」
翔は今、ハワイで休日を過ごしている事情を話してくれた。果歩は興味深くそれを聞く。
「そうなんだ……すごいなぁ。私なんて、海外はまだ二回目だよ」
感嘆の気持ちで言った果歩のことを、今度は翔から聞いてきた。
「二回目なんだ? 一回目はいつ……とか聞いても良かったかな」
ちょっと気が引けた、という様子だったので、果歩は軽く手を横に振って、返事をする。
「あ、うん! 大丈夫。えっと、大学生の頃かな」
女友達との、わいわいした旅行だったことを思い出す。
この旅行でも、そのとき行ったところへ再び行ってみたりして、懐かしくなったものだ。
「学生の旅行も楽しいものだよね。果歩さんはまだお若く見えるけど、大学生の頃、っていうことは、もう社会人?」
翔は果歩の言い方から推察したらしい。
聞かれて、果歩は軽く頷いた。
「そうだよ。二十五歳」
果歩の答えに、翔はちょっと目を細めて感心したように言った。
「へぇ、若いなぁ。俺はもうすぐ誕生日なんだけど、二十九になる」
そんな言い方をするので、果歩は笑ってしまった。
次に二十九歳になるなら、それほど年齢は変わらないのでは、と思ったのだ。
なのにおじいさんかなにかのように言うものだから。
「でも今は二十八歳なんだよね? それじゃ、三歳しか変わらないんじゃ……あ、そうだ。お誕生日はいつ頃……」
その通りのことを言って、話はどんどん続き、盛り上がっていく。
「オマタセシマシター」
不意にうしろから男性の、しかも日本語の声が聞こえたので、果歩はちょっと驚いた。
振り向くと、店員が両手に料理などの乗ったトレイを軽々と持って、にこにこしている。
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