カフェとジュースとトラブルと

3/6
前へ
/151ページ
次へ
「ああ、サンキュー、サム」  どうも翔とは顔なじみのようだ。  すぐに名前を呼んで、にこっと笑った翔。  サムと呼ばれたハワイの地元民といった容姿の、彫りが深い顔立ちにやや恰幅がいい体格の彼は、にっと陽気な笑顔で笑い返した。 「ショウ、ヒサシブリ」  サムが料理を並べていく間に、翔が軽く説明してくれた。 「この店によく来るから、顔なじみなんだ。サムは日本語が上手いんだよ」  ハワイの接客業に就いている人間は、大抵ある程度、日本語ができる。その例によって、らしい。  果歩は翔の前に料理を並べ終えて、自分のほうへ回り込みかけたサムに、声をかけた。 「そうなんですね。とてもお上手です」 「アリガトー」  果歩の褒め言葉に、サムはやはり、にっと笑って、まずパイナップルジュースのグラスを取り上げたのだけど……。 「あ、すみません! これ、お邪魔にな……、あっ!?」  サムのいた側に、果歩はスマホを置いてしまっていたのだった。  料理を撮ろうと思って、出していたのが災いした。  すぐに退けようと手を伸ばしたのだけど、さらにそれが悪かったようだ。  トンッ、と果歩の肘と、サムの手がぶつかる。  ぐらっとパイナップルジュースのグラスが傾いて……。 「oh……!」  サムが鋭い声で言ったときには、テーブルの上に、ジュースがバシャン、とぶちまけられていた。
/151ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1216人が本棚に入れています
本棚に追加