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「ああ、サンキュー、サム」
どうも翔とは顔なじみのようだ。
すぐに名前を呼んで、にこっと笑った翔。
サムと呼ばれたハワイの地元民といった容姿の、彫りが深い顔立ちにやや恰幅がいい体格の彼は、にっと陽気な笑顔で笑い返した。
「ショウ、ヒサシブリ」
サムが料理を並べていく間に、翔が軽く説明してくれた。
「この店によく来るから、顔なじみなんだ。サムは日本語が上手いんだよ」
ハワイの接客業に就いている人間は、大抵ある程度、日本語ができる。その例によって、らしい。
果歩は翔の前に料理を並べ終えて、自分のほうへ回り込みかけたサムに、声をかけた。
「そうなんですね。とてもお上手です」
「アリガトー」
果歩の褒め言葉に、サムはやはり、にっと笑って、まずパイナップルジュースのグラスを取り上げたのだけど……。
「あ、すみません! これ、お邪魔にな……、あっ!?」
サムのいた側に、果歩はスマホを置いてしまっていたのだった。
料理を撮ろうと思って、出していたのが災いした。
すぐに退けようと手を伸ばしたのだけど、さらにそれが悪かったようだ。
トンッ、と果歩の肘と、サムの手がぶつかる。
ぐらっとパイナップルジュースのグラスが傾いて……。
「oh……!」
サムが鋭い声で言ったときには、テーブルの上に、ジュースがバシャン、とぶちまけられていた。
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