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弥生の夜風に揺れる白樺をくぐり抜け、白樺号が平庭峠を下る。一番後ろ窓際の座席にポツンと座る凜は、窓枠に頬杖をついて青白く浮かぶ木々を眺めていた。
盛岡から既に二時間、バスはまだ走り続ける。あたりは既に暗闇に包まれていた。
「陸中山形、陸中山形」
バスの運転手はミラー越しにチラリとこちらを見て、動かないことを確認して「久慈行、出発します」と低い声でつぶやいた。
白樺号は動き出し、久慈渓流に沿って蛇行する国道を下る。やがてポツリと街灯がついた、寝静まった久慈へ吸い込まれていった。
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