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ーー藤田の匂いは好きだけれど、それは藤田の匂いだからだ。中村のそれとは、なんだか違う。きっと遺伝子的に相性がいいのは中村なんだろうな。そう思った。
しばらくして、中村は私を駅まで送ってくれた。22時を過ぎていたのに、まだ道を歩いているサラリーマンが何人かいてさすが眠らない街だなぁと思った。別にこの辺りは繁華街でもなんでもないのに。
駅の改札に着いて、中村は名残惜しそうに「またね」と言った。
「今度さ」私は言った「私ん家、おいでよ」
駅は帰宅する人、これから仕事であろうチャラい兄ちゃん姉ちゃんたち、そしてその客たちがが行ったり来たりしている。
いいの、と彼は言った。
私は「うん」と頷いて「またね」と手を振った。中村はちっちゃな米粒みたいになるまでずっと手を振っていた。
そのことを私が知っているのは、彼と同じくちっちゃな米粒みたいになるまで何度も彼の方を振り返ったからだけれど。
私はトイレでなんとなく化粧を直してから、電車に乗った。明日、講師の人に謝らないとな、と思いながら。
スマートフォンの通知がピコンと鳴って、中村からだろうなと思ったら案の定中村からのLINEだった。
「気をつけてね、寝過ごさないでね」というメッセージに私は「さっき寝たから平気だよ」と返信をした。
やっぱりすぐに既読がついて、彼は「そうだった」ととぼけた返事を寄越したのだった。
中村とやりとりしているうちに、いつの間にか電車は自宅の最寄駅に着いていて、閉まりかけのドアをなんとか潜って私は家路についた。
それから、中村はたびたび私の家にやってくるようになった。私も彼もバイトをしているから、予定が合う日だけだったけれど、その割には頻繁だった。
中村がうちに来るようになって何回めかの昼に、私たちはセックスをした。
彼の愛撫はいたく丁寧で、こんなに優しくされたのは生まれて初めてだった。
私は何回かイって、中村も私の中で果てた。コンドームがなかったから、がっつり中に出されてしまった。
「ごめんね」と謝る彼に私は「ピル飲んでるから大丈夫」と答えた。
彼は「どうして」なんて聞かずにただ悲しい顔をしていた。
「俺の赤ちゃん産んでよ」
と呟いた中村に私は「まだ高校生でしょ」とデコピンをしてやった。
セックスをした後の中村は珍しく甘えたで、私の胸を触ったり吸ったりしていた。
そんな彼が愛おしく感じて、私は短い腕で精一杯彼を抱きしめた。
そのうち、私たちは再びもつれあって、2回目の行為をした。足の間から緩い白濁が垂れて、ベッドに染みていった。
中村はその様子をじっと見ていた。
その時、ベッドに放られた自分のスマートフォンが震えた。私はとっさに画面を裏返す。誰からの連絡かなんとなく分かってしまったから。
中村はそのことに気がついたのだろうか。わからないままだるい体を起こして、私はシャワーを浴びに行ったのだった。
割れ目から、私のと混ざって薄くなった中村の精液が流れ出ている。私はそれをぬるいお湯で流した。
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