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ひとまず詫びたほうがいいのか?
しかし、見知っている人を一瞥したことがそんなに悪いことなのか。
確認したくて一瞥といわず、もう少し長く見てしまったかもしれないが。
脳内であれこれ考えているうちに苺佳は少々腹が立ってきた。
「確かに綺麗な顔だと思うけど……。見知っている人の顔をほんの少し
見ていたことがそれほど悪いことだとは思えません。
診察の時に患者の顔をほとんど見もせずにモニターの画面ばかり見て
患者と話をし、おまけにその上明らかに症状の出ている部位を前にして
『病理はどこにもない』なんて言う先生の言動のほうこそ、よほど
責められるべきだと思いますが、どう思われます?
先生はそんなだから私のことなんて覚えてないでしょうけど、
以前2度ほどあなたの診察を受けたことがあって、それで……なのに
やっぱり私のことなんて気付いてもないんだなぁってそういうのがあって、
あなたのことを見てただけ。
誘惑する気なんてサラサラありませんから、どうぞご安心ください。
それと私、同性とそういう関係になりたいっていう趣味も
ありませんからっ」
あまりの言われように、私は事なかれ主義で謝ることよりも、今受けた
無礼と過去の彼女の非礼を責めることのほうを選んだ。
椅子に座り明後日の方に顔を向けたまま私の顔も見ずに非難してきた
彼女は、思いがけず自分に反撃をかましてきた私に、初めて顔を向け
視線を投げかけてきた。
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