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 もうすぐ彼女の二十歳の誕生日だ。私はその日、彼女に打ち明けないといけない事がある。彼女が悩んでいるのには気付いていたから、本当ならもっと早く打ち明けたかったのだけれど、でも、二十歳まで打ち明けないというのが、約束だったのだ。この約束が本当に正しいのかどうかなんて、その時は、いや、今でさえも分からないのだけれど。  あの時。私は最初、彼女と契約をしたのだ。私は人間としての幸せを味わってみたかったから、彼女を二十歳まで生かす代わりに、その後の人生を貰おうと思っていたのだ。彼女は薬を飲むと即答した。母親のためにもそうしたいのだと。けれど。  その契約を、彼女の母親に知られてしまった。ドアの向こうで聞いていたらしい。悪魔でもこういう失敗をすることはある。  そして、その母親に頼まれたのだ。娘との契約を破棄して、自分と契約してほしいと。彼女は今すぐ人生を私に委ねる、と言った。その代わりに、娘を幸せに生かしてやって欲しいと。  母親の強い気持ちに、私はつい、彼女の言うとおりにすることにした。その時に、二十歳までこのことを娘には言わないと約束をしたのだ。  だから、今、娘の側にいる私は、彼女の本当の母親ではない。けれど、彼女の母親の姿で、私は彼女の母親として生きてきた。私が彼女から貰ったその人生は、貧乏ではあったけれど、とても幸せだった。  机でうたた寝している娘を、私は見つめる。仕事で疲れているのだろう。もうすぐ二十歳になる彼女に、この事実をどう伝えるか、それが私の今の悩みだ。
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