愛の形

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「仕事ができると、つらいね」 「帰ったらあなたが居ると思うと、頑張れる」 「嬉しいな、美咲の役に立てて。愛してるよ」 「私もよ、拓斗」  美咲は、穏やかな笑みをテレビに向けた。心が満たされる感覚の中、美咲は前の彼氏について思い出していた。  会社の先輩。年齢は彼女よりも相当上の四十二歳。独身だったので不倫ではなかった、年齢差としてはそれに近いものがあった。  彼からコッソリとアプローチがあった。最初は付き合う気がなかった美咲だが、年上の包容力に魅せられてゾッコンになっていった。  会社には極秘で交際。彼から「結婚するときに、言えばいいよ」と告げられていた。しかし、一年間の交際は、彼の海外転勤により突然、終わりを告げた。  しかし、転勤が直接の原因ではなかった。 「あなたは、ずっと私を愛してくれる。裏切らないし、二股もかけない」 「そんなの、当り前さ。僕の瞳には君しか映っていない」  転勤には、婚約者を連れて行くとの噂が流れた。どこかの銀行の役員の娘さんだとのことだった。  美咲は、真偽を確かめるためにメッセージを送った。しかし、メッセージはブロックされ、返事は来なかった。  遊ばれたのだ。  その後、何人もの社内の女の子が餌食になっていたことが発覚した。しかし、その頃には彼は日本にいなかった。 「ねえ、ご飯食べなよ。僕、腹ペコだよ」 「私も、お腹すいちゃった」  美咲は袋から惣菜を取り出し、テーブルに並べた。テレビに映る彼の前にも料理が並んでいた。画面内ではあるが。 「いただきます」  二人で同時に手を合わせる。美咲の心に暖かい感情が広がった。  私を裏切らず、いつも気遣ってくれる。過度に干渉してこないし、必要なときはいつでも相手をしてくれる。 「何食べてるの?」  美咲は買ってきたハンバーグ弁当のおかずを口に運びながら、テレビに向かって話しかけた。 「僕もハンバーグだよ」 「あっ、私のお弁当を見て真似したでしょ!」  拓斗は「ばれたか~」と舌を出した。そして、二人で笑い合う。
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