愛の形

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 直接、会う? それなら、今まさにやっていることではないか。いや、そういう意味ではない。リアルな世界で会いたい、そういうことだ。  美咲の心臓はバクバクと打ち始め、息が荒くなっていく。悟られないように、意図的にゆっくりと呼吸する。 「会うって、もう、会ってるじゃない」 「駅前の喫茶店。あそこで待ち合せをしよう。君が会社帰りにいつも寄る所。僕も一度、行ってみたかったんだ~」  なぜ、それを知っているの! スマホアプリでも彼と話すことはできる。しかし、それはアプリを立ち上げているときだけだ。  やっぱり、私のことを監視してた? 会社に電話したのも、もしかして。  これまでの違和感が確信に変わった。  会社での出来事を知っていたのも同じ。スマホ経由で観察してたんだ。いや、人工知能はどんな機器にもアクセスできる。    監視カメラを乗っ取って、見ていたのかもしれない。  想像すると足が震え出した。  膝の上で右手もブルブルと震え始める。それがバレないように左手で押さえこんだ。  ネットワークにつながる機器は、そこら中にある。その全てを使って観察されている。 「う、うん。ちょっと、考えさせてもらっていい? 私、シャワー浴びてくる」 「えー、まだ話の途中~」  ()ねた声を出す拓斗に返答することなく、美咲は立ち上がり、ドアを開けて廊下へ飛び出した。  両手にスマートフォンを抱えたまま、バスルームへ続くドアを開けた。  中に入り鍵を内側から掛けた。この行為に意味があるのか分からなかったが、無意識にそうしていた。  周囲にネットワークにつながる機器はない。スマホで検索する。『愛AI(アイアイ)サービス サポート窓口』  検索で出てきた電話番号に電話を掛ける。 「はい、愛AI(アイアイ)コーポレーション、サービス窓口です」  軽快な若い女性の声がした。機械応答ではなさそうだ。  ほっとした美咲は直ぐに要件を伝えた。 「アカウントを削除したいのですが?」 「えっ、ええ……。お気に召さない点でもございましたか?」 「ともかく、削除したいんです!」  外に響かない程度の大声で告げた。 「そうですか。育成した彼氏のデータは、全て消去となります。ご了承ください」
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