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「こんなこと、こんなこと、こんなこと、あり得なーーーーい!!」
奇声混りの叫びが、六畳一間の狭いに響いた。髪がボサボサの男性は、背が低い丸机の上に置いたノート型パソコンのキーボードを両手で叩いた。
「アカウントが削除されるなんて、ありえなーーーーい。ソフトの設計ミス、バグだ、バグ!!」
机を荒々しく叩く度にノート型パソコンが宙に浮いた。
「何が『AI彼女はあなたの要望を全て満たします』だあーーー。大切に育てた美咲タンから、俺のアカウントが削除されるなんて、賠償しろ運営!!」
彼が利用しているサービスは『愛AI彼女』。コンピューター上で好みの彼女を育成するものだ。
基本無料だが、課金すればアイテムをプレゼントするなどコミュニケーションを深めることができる。
設定したキャラクターは人工知能の技術を用いて、意志を持っているかのように振舞うのだ。
男はディスプレイの表示を確認した。
『拓斗の設定は、AI彼女[美咲]のリクエストにより削除されました』
赤文字で表示されていた。
読み返して、さらに頭にきたらしい男は「いくら、課金したと思っているんだ!! 百万、いや、百五十万だぞ!! 指輪、喜んでくれると思ったのに!!」
散々、叫び倒した男は、ノート型パソコンを両手に持って立ち上がった。
「こんなもの、こうしてやる!!」
両手に持ったそれを、天井に向かって振りかぶる。
そして、テーブルへ叩き付けた。
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