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そして、俺は現在、アマチュアのボクサーをしている。
ジム主催の試合に出場しては、微々たるファイトマネーを得ている。もちろん、アマチュアなので、ボクシングだけでは生活はできない。だから、俺は練習の合間を縫って、様々なアルバイトに精を出した。
六畳一間のボロアパートに一人、爪に火を灯す生活をしていた。
夢はプロになってチャンピオンベルトを腰に巻き付けること。やるからには、頂点を目指そうと思う。
そんな時、俺は街で偶然、春香に会った。
春香はすっかり別人みたいに美しくなっていた。
俺たちは互いの近況を報告し合い、思い出話に花を咲かせた。
春香は現在、奨学金で音大に通い、プロのオルガン奏者を目指していた。俺はプロのボクサーを目指していると話すと、春香は納得顔で、ヒロくんだったらなれるよと励ました。
俺は天にも昇りそうなほど、嬉しかった。
春香は一通りの夢を語った後、言った。
「わたし、聴覚を喪っていく病気にかかっているの。音楽をやる人にとっては致命傷よね」
俺はどうしていいか、わからなかった。耳が聞こえなくなるなんて、音楽を目指す人にとっては死刑宣告のようなもの。
「俺、力になれないかな?」
「大丈夫。気持ちだけでも嬉しい。アメリカの有名な医者の手術で完治した例があるけど、費用が1500万もするのよね」
「1500万...」
今の俺には到底、払えない金額だ。
「なあ、俺に任せてくれないか。必ず、なんとかするよ」
連絡先を交換した後、俺は後悔した。できもしない約束をしたのだから。俺は途方に暮れた。
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